リソース不足の問題は解消できていない

 一方、開発リソースについては若干の改善がみられるが依然として達成度は低く、当初の計画以上の人員を投入して開発を成功に導いている様子が伺える。この開発リソースについては別の調査結果もみてみよう。図3は人的リソースと知的リソースの充足度について問いかけた結果である。ここでいう知的リソースとは、企業内に蓄積された製品開発時に活用できる知識やノウハウのことを指している。

図3
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 まず、人的なリソースが不足していると感じている技術者は70%以上に及ぶ。これは2007年度とほぼ同じ水準であることから慢性的な人員不足が継続していると思われる。知的リソースについてもやはり70%近くが不足と感じており、これも2007年度と同水準である。このことから、これらの課題に対しては各企業ともあまり手が打てていないようである。特に人的リソースに関しては、抑制や人員削減の影響もあるのかもしれない。

製品開発の業務レベルは向上している

 今度は、プロジェクトの成否に影響を与える開発プロセスの状況について確認してみる。図4は、製品開発に必要な業務を、企画や構想設計あるいはプロジェクト管理などの領域にわけ、それぞれの領域ごとに2010年度の業務のレベルが2007年度と比較してどのように変わったかを表している。

図4
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 最初に目を引くのは構想設計と詳細設計の伸びだ。詳細設計領域では基本性能を含む様々な分野に渡る事前検証の充足度を測っていることから、多くの企業が、いわゆるフロントローディングの開発スタイルに移行しつつあるということがわかる。

 また、先に述べたように、期間や工数を見積もるプロジェクト計画はいまひとつだが、プロジェクト管理に関する領域は伸びを示している。複雑化する製品やグローバル開発に対応するためには必然的に進捗管理などの強化が必要ということであろう。一方で、日本の製造業が比較的弱いとされている企画領域が微減という結果になっているのは気がかりだ。次回の全国調査では大きな伸びを示すことを期待したい。さらに、技術開発の領域も大きくポイントを下げている。リーマンショック前後の研究開発投資額は微減との調査結果も出ているが、先行的な新技術開発は手控えられた可能性は否定できない。

リーダーシップに課題