クルマの低炭素化と省エネルギー化で期待されるのが、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の普及である。経済産業省が策定した「次世代自動車戦略2010」は、次世代エコカーの普及目標として2020年に新車の15~20%をEVまたはPHEVにするという方針を明らかにしている。
ただ、主要部材であるLiイオン電池が高価なことから、本格的な普及にはまだ時間がかかると見られている。しかし、普及目標を達成するための施策がすべて実行に移されているかと言えば、答えはノーだ。既存車両のEVやPHEVへの改造(コンバージョン)がその一つ。日本では普及政策として採用されてもいない。
PHEVの本場、米国では改造EV/PHEVにも政府補助金が
PHEVの概念が生まれた米国では、草の根的にじわじわとコンバージョンPHEVが普及しつつある。最もポピュラーなケースは、電力事業者などによる実証試験だ。例えば、米American Electric Power社は、米Ford Motor社の「Escape Hybrid」をPHEVに改造したコンバージョンPHEVを使った実証試験を展開する(図1)。
EVやPHEVの普及推進が最も盛んな地域であるカリフォルニア州では、自治体による率先導入も進んでいる。サンフランシスコ市は、市庁舎前に充電スポットを設置し、公用車やカーシェアリング用のPHEVが利用できるようにしている。そこではPHEVにコンバージョンした「プリウス」が採用されている(図2)。
米国の電力技術や政策を研究する米Electric Power Research Institute(EPRI)でも同様に、コンバージョンPHEVのプリウスが見られる。米CalCarsのようにエコカーの普及推進や啓蒙活動を積極的に行う非営利団体(NPO)もあることから、改造によるプリウスPHEVを保有する個人ユーザが見られるようにもなりつつある。
なぜ米国では、コンバージョンPHEVが増加しているのだろうか。それは、米国や州の政府が、燃費が良く排気ガスや温暖化ガスの排出量が少ないエコカーを改造車でも普及させる政策を採っているからだ。具体的には、改造車であってもEVやPHEVには米国政府から補助金が給付される。改造の費用が新車一台の価格よりも安い分、新車より補助金の支給額が少ないが、改造コストの大半を占める電池パックのコストを補てんするには一定の効果があるようだ。
100万台以上ある国内ハイブリッド車が改造の対象に
一方、日本では改造によるEVやPHEVは、まだ大きな流れになっているとは言えない(次のページ)。