今回紹介する書籍
題名:微博:改変一切
著者:李開復
出版社:上海財経大学出版社
出版日:2011年2月

 今週から3週間にわたって取り上げるビジネス書は2011年2月に出版された『微博:改変一切』。日本語に訳すと「マイクロブログは全てを変える」ということになる。マイクロブログというのは、一投稿あたり140字を上限として投稿できる、いわゆる「簡易投稿サイト」のこと。日本ではアメリカ発のツイッターが有名だが、中国では基本的にはツイッターの利用は認められておらず、中国独自のマイクロブログが複数ある。

 原題の「微博」というのは、そのマイクロブログを指す中国語で、微=マイクロ、博は「ブログ」の音訳「博客」の略である。よく「中国版ツイッター」という説明の仕方をされるが、ツイッターは1社のサービスの名称だが、「微博」は一般名詞である(ただ、2011年3月に新浪が「微博」とその英語読みである“weibo”をアメリカで商標申請している)。日本ではツイッターが使えるため、日本独自のマイクロブログのサービスで目をひくものがほとんどないが、中国では大手の新浪、捜狐、騰訊以外にもいくつかのマイクロブログサービスがあり、人気を博している。

 本書は、マイクロソフト、グーグルなどで要職をつとめてきた李開復氏による、マイクロブログ指南書である。本書によると、李氏は「新浪微博」で270万人以上の「ファン」(ツイッターのフォロワーに相当し、李氏の発言に注目している人を指す)を持ち、人気ランキングでは12位。騰訊微博では780万人以上の「聴衆」(同じく李氏の発言に注目している人)を持ち、人気ランキング2位になっている(2010年12月27日現在)。また、本書出版後も、李氏のファン数は増え続け、2011年4月17日現在では、新浪微博の「ファン」数は470万人弱で9位になっているので、李氏は中国で最も微博を使いこなしているCEO(彼は2009年にグーグルを退社後、「創新工場」という起業支援企業を立ち上げている)と言っても過言ではないだろう。因みに、日本でツイッターを使いこなしているCEOといえば、ソフトバンクの孫正義氏だが、孫氏のフォロワーは110万人弱(同日現在)であり、これを見ても李氏が中国での微博を語るのに適した人物であることは明らかであろう。

 本書は、本文6章と二つの付録から構成されている。本文では、「微博と自分とのかかわり」「微博現象に対する分析」「微博の魅力」「微博の書き方」「ファンの殖やし方」「微博におけるビジネスチャンスと未来」について述べられ、付録は、「李開復微博語録」「お勧めの微博ユーザー」の2項目となっている。1冊の中に、具体的な「微博指南」と「微博の流行という現象の考察」が詰め込まれているため、やや散漫な印象も受けるが、これ1冊で微博を使いこなせるようになり、その社会的な意義を理解することもできるという「入門書」としては大変よくできた本だと言える。事実、2月の発行以降、書籍のベストセラーコーナー等におかれ、読者の評価も高い。

 本コラムでは次回、次々回にわたって、李氏が、全世界的な潮流とも言える微博現象をどのように見ているかについて紹介していく。中国の言論統制については様々な報道がなされているが、微博について知ることで、一人ひとりの市民が自ら意見や情報を発信できる装置を手にした今、どのような変化が起こっているかについて、より一層深い理解を得られることと思う。