竹内 健の「エンジニアが知っておきたいMOT(技術経営)」
目次
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「こんな製品を開発します」では投資してもらえない
企業にとって技術は手段であって目的ではない
「開発する製品や技術の説明はあるんだけど、ビジネスや収益の見通しがないんですよ」。苦境が続く電機メーカーの経営者が経営方針を説明する会に出席した金融業界の方々のぼやきです。確かに、エレクトロニクス業界では、技術や製品の開発をしていれば、ビジネスモデルをさほど気にしなくてよい時代が続きました。
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海外の巨大企業との連携で、ピンチをチャンスに変える
懐に飛び込み、日本の技術を世界標準に
シャープの液晶パネルの事業にiPhoneやiPadの製造を手掛ける台湾の鴻海精密工業(Hon Hai)が出資。ルネサス エレクトロニクスは世界で4割もの市場シェアを有するマイクロコントローラ(マイコン)の製造を、世界最大の半導体製造の専業メーカーである台湾のTSMCに委託。
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GoogleやFacebookがハードに進出する時代とは
新分野に挑戦し続ける者が生き残る
エルピーダメモリの倒産やパナソニック、ソニー、シャープ、NECなどの巨額赤字。エレクトロニクス業界は大企業といえども安泰ではありません。会社が倒産しなくとも、三洋電機のように大企業が買収されたり、事業部門が売却されることは珍しくなくなりました。
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誰もが満足できる「正義」がない時代を生き抜くには
波乱の時代、個人のサバイバル能力が試される
エルピーダメモリが倒産し、米Micron Technology社や韓国SK Hynix社が買収を狙う。巨額の赤字に苦しむシャープの液晶パネルの工場に、台湾のEMS大手のHon Hai社が出資。ソニーが従業員の6%にあたる1万人を削減。
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日本のエレクトロニクス、敗因も復活への処方箋も多種多様
悲観的になり過ぎず自らの強みを見つめ直す
「ムーアの法則の終焉」「過剰品質の高コストな製品」「ハードからソフトへの転換の遅れ」「機能のガラパゴス化」――日本のエレクトロニクス産業の凋落の原因として、以上のようなキーワードが良く使われます。エルピーダメモリが倒産しただけではなく、パナソニック、シャープ、NEC、ルネサス エレクトロニクスといっ…
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エルピーダ倒産はエレクトロニクス激震のはじまり
エンジニアも個の時代に
エルピーダメモリが4480億円もの巨額の負債を抱え2012年2月27日に倒産しました。フラッシュ・メモリの置き換えを狙った新メモリReRAMを同社と共同開発する私はさまざまな影響を受け、このコラムも一カ月も間が空いてしまい申し訳ありませんでした。
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ツイッター、やらなきゃ損?!
ソーシャルメディアや学会を使い、自分という商品を売り込む
パナソニック7800億円、ソニー2200億円、シャープ2900億円、NEC1000億円、エルピーダメモリも1000億円超とエレクトロニクス・メーカーが巨額な赤字に苦しんでいます。苦境の原因は東日本大震災や円高だけではないでしょう。震災以前から、日本のエレクトロニクス・メーカーはスマートフォンや半導体…
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Kodak破綻、フラッシュ・メモリが日本発だから富士フイルムは生き残れた
異分野が集積した日本のエコシステムでイノベーションを生み出そう
アメリカの名門企業Eastman Kodak社が経営破綻に追い込まれました。一方、コダックと同様に銀塩フィルム・メーカーとして一世を風靡した富士フイルムはデジタル化への波にいち早く乗り、生き残ることができました。
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就活シーズン到来、波乱の時代の仕事選び
つらくても楽しいと思える仕事、変化に富んだ環境を見つけよう
新年になると就職活動が活発化し、人気企業のランキングが様々な機関から発表されます。掲載した順位は、2011年の1月、つまり1年前に発表された、理系の学生を対象とした調査結果の一つです。このランキングをどう思いますか?
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2012年のエレクトロニクス業界:産官学の衆知を集め正念場の戦いに挑もう
低利益率で参入障壁を高め残存者利益を得る戦略
明けましておめでとうございます。今年は液晶パネル、テレビ、太陽電池、半導体メモリ、スマートフォン、デジタルカメラ、パソコンなど、エレクトロニクスの様々な分野で世界的に激しい競争が行われ、事業の淘汰が進みそうです。いわば、生き残りを賭けた重要な戦いの年。
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あなたが会いたい人も、きっとあなたに会いたい
徹底的にユーザーの立場に立った商品企画と技術開発
早いものでもう年末ですね。2月にこのコラムを始めてから、飽きずに読んで下さっているみなさん、本当にありがとうございます。おかげさまで多くの方に読んで頂き、とても励みになります。今回は今年最後のコラムですし、ブログ風に気楽に書きますので、どうぞ力を抜いて読んで下さい。
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Appleが半導体ベンチャーの買収を狙うわけ
アプリケーションを見据えたデバイス・素材の大きな潜在力
「AppleはSSD(Solid State Drive)やフラッシュ・メモリ用コントローラを手掛けるイスラエルのベンチャー企業Anobit Technologiesを4億~5億米ドルで買収する交渉を進めている」。先週はこのような報道が世界を駆け巡りました。
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iPhoneだけではない引き算の重要性
思い切った技術の取捨選択が「異質の時代」のカギ
半導体デバイス技術に関する世界最大規模の国際会議であるIEDM(International Electron Devices Meeting)に参加するためにワシントンに滞在しています。会議の冒頭でIntelのMark Bohr氏が「The Evolution of Scaling from the…
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エレクトロニクスの知的創造でも韓国が大躍進のわけ
ISSCC論文数で日本を抜いた韓国のリノベーション
2012年の2月にサンフランシスコで開催される半導体の学会ISSCC(International Solid-State Circuits Conference)のプログラムが先ごろ発表されました。注目すべきは、論文採択数でアジアがアメリカを初めて追い越したこと。そして、アジアの中では、韓国が日本を…
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女子力が日本のエレクトロニクスを救う?!
技術を生かすサービスの市場を見定め、編集力や共感力で実現する
先ごろ海外メディアなどに掲載されたように、日本社会では女性は生かしきれていない。少子高齢化が進み、日本全体で労働人口が減っているにもかかわらず、もったいないことです。
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1+1が1になるかも?!
エレクトロニクス業界の統合は諸刃の剣
エレクトロニクス業界では企業間の連携や統合が盛んです。ただ、企業の統合のためには、まず、勝つための戦略が必要です。
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TPP論争に白けてしまうのはなぜ?
必要なのはグローバル化の是非ではなく、グローバル化を生き抜く戦略
TPP(環太平洋連携協定)の交渉に日本が参加するかどうかについて、大論争が巻き起こっています。TPPは10年の間に関税を撤廃する「例外なき自由化」を目指しています。TPPに象徴されるグローバル化により、農業や医療などの日本の産業や制度が崩壊するのではないか。自由化が進むと、日本がアメリカのような格差…
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オリンパスのエンジニアのみなさんへのエール
コーポレートガバナンスの危機を生き残る術
オリンパスの不透明な取引がファクタという雑誌の8月号に取り上げられました。オリンパス元社長のMichael Woodford氏はファクタの記事をきっかけに自社の不透明な取引を知り、問題を解明しようとしましたが、社長就任からわずか半年で突然の解雇。CEOに就任してからは、たった2週間での解雇でした。
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ひょっとして信用されていない?!
知らないと損をする?!欧米のCredibility
タイの大洪水で自動車、電機を中心に400社を超える日本企業が被害を受け、あらためて日本企業がアジア各国に製造拠点を展開していることを実感しました。また、商品を販売する市場としても、日本企業は欧米だけでなく、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)やVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、…
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Steve Jobsを育てたシリコンバレー
起業家を育む暖かい視線
10月5日にSteve Jobsが亡くなって以来、Jobsの話題でもちきりです。技術と直接は関係ない人まで、とうとうとJobsについて語っている。フラッシュ・メモリを開発していた私は、自分の製品の最重要な顧客がAppleだったので、Appleとは深くお付き合いしました。Steve Jobsは凄い人だ…