一つ確かなことは、これらは量的に大きい市場になるということだ。このことは、メーカー側も大量生産に向かうことを意味する。我々は、ウエハーの量が7倍にまで増え、2015年には2インチのウエハー換算で8630万枚にまで達すると予想している。このようなウエハー量の増加によって、2015年の時点では、各メーカーは大変大きな生産能力を必要とするようになり、必要な投資額も膨大なものになるだろう。そして、縦型に統合された巨大な企業が大きな影響力を持つことになるだろう。たとえば、我々の「LED fab database」によると、総合電機メーカーである韓国Samsung Electronics社や韓国LG Display社などは2年前に参入し、すでに成形面換算で世界全体の20%の生産能力を持っている。現在LED事業に参入しようとしている半導体メーカーも、こういった大量生産に対応するための投資ができるプレイヤーに含まれるだろう。現在GaNを利用したLEDのエピタキシーに関わっている61以上の企業のうち、必要な大量生産能力を達成し、技術を極めた企業だけが生き残ることになるだろう。そのため我々は、2013年からかなりの企業統合が始まると予想している。

 市場が成熟するにつれて、プロセス技術が設備メーカーに流れていっているようにも見える。市場は設備メーカーが注目するのに十分なほど大きなものになってきていて、彼らが必要に応じてデザインされたツールを開発するための投資も増えている。これはコストダウンをもたらすだろうが、設備メーカーがより多くの価値を持つようになり、チップが商品のように扱われることにもつながるだろう。

 実際に、もし高輝度LEDの価格が十分に下落し、高輝度LEDを使用した一般照明の市場が拡大した場合、その時もまだチップが利幅の大きい製品であるとは考えづらい。「安いコストと十分な利幅は同時に実現しづらい」とEPICの事務局長であるTom Pearsall氏いう。「お金になるのはおそらく照明器具だろう。LEDの低い利幅が問題にならないくらいに十分な付加価値を持つだろうから」(同氏)。

 一方で、一般照明の市場はサプライヤーにとって、うまみのある場所になるかもしれない。コストの低下により100億ドルの新たな市場が突然生まれ、その市場は光の質と均一性に関して非常に厳しい要求をする。そのため、最先端の技術を持っているサプライヤーが成功を収めることになるだろう。しかし、こういったトレンドすべては、ディスプレイ向けや特殊な用途向けLEDの市場において、高輝度LEDのコストを押し下げるだろう。そして、成長の余地が少ないこういった分野においては、必ずしもいい影響が現れるとは限らない。おそらく、LED価格の下落は単に収益の減少につながるだけだろう。

 それでもなお、半導体照明は、照明システムに知能や制御機器を追加するという点で、様々な新しい可能性をもたらす。それは斬新な照明のデザインだけでなく、エネルギー・コストを削減することにもつながる。いくつかの試算によると、照明システムはセンサーや制御機器を加えることにより、照明を人の多さや自然光の量、その場所で行われている活動によって調節し、電力消費を60~70%ほど減らすことができるという。また、人間の光に対する反応を調べたある調査は、特定の波長が人間の注意や気分を改善する可能性があり、概日リズムの調整に重要な役割を果たしていることを示唆している。たとえば米Boeing社は、同社の最新のジェット旅客機内の客室照明をLEDに切り替えた。主に電球を交換するコストをなくし、配線の重量を減らすためである。しかし、照明の色や強度を自然光の変化に似せて調節することにより(たとえば早朝の冷たい色から明るい昼間の色、そして暖かな夕暮れ時の色へ変化させることにより)、乗客が長時間のフライトによる時差の影響を受けづらくなることを発見した。

 これらのことが意味するのは、SSL(solid state lighting:LEDや有機ELなどを使用した照明)のブームに乗って収益を上げられるのは以下のような企業になるだろうということだ。まずは、高品質・低コスト生産の技術を開発・管理できるLEDメーカーと設備メーカー。ユニークなデザインとソリューションを提供できる照明器具メーカー。そして、用途に合わせたりエネルギーを節約する目的で照明を調節できる「インテリジェント照明」を提供するシステム・サプライヤーである。