エンジン、ボディ、タイヤ、シャシー、サスペンション、電装品、等々と分解していくことを想像したでしょうか。このように製品を部品にまで分解すると、確かに共通化できる部位が見えてくるような気がします。しかし、どの部品を共通にするかという手段は考えられたとしても、どのようなユーザーや市場に合わせていくのかという目的が分かりにくいという欠点があります。例えば、エンジンとトランスミッションは共通であるという結果論を書くことはできても、なぜエンジンとトランスミッションを共通にすべきなのか、あるいはなぜボディはオプションとして数種類用意するべきなのかは分かりません。実現手段による分解は、どのようなラインナップを用意するべきなのか、という示唆が得にくい分析方法なのです。

要素(実現手段)ばらし

 プラットフォーム化に対する示唆を得るにはユーザーの視点に立った「因数分解」が必要です。設計側の論理ではなく、ユーザーにとって製品や商品がどのように映るか、という視点で順次ばらします。これをiTiDコンサルティングでは「要件ばらし」と呼んでいます。製品の機能やデザイン、満たすべき法規制への適合などの要件をばらして考えることで、何が求められているのかを整理する手法です。このようにばらすことで多くの要件は製品に関わらず共通となり、一部の要件だけが特徴を持ち、製品固有であることがわかります。クルマでいうと、走る・曲がる・止まるなどの車種に関わらず共通の要件と、車種ごとに異なる5人乗り、燃費性能などの固有の要件に分けられます。

要件ばらし

 一般には、製品がより多くの機能を持ち、数多くの要件を満たすことは差別化につながり、良いことで す。しかし、一部のユーザーが求めないほどの高品質であったり、使用しない機能があったりすれば、過剰品質であるとも考えられます。それではその 機能や品質を持ち合わせていない安い競合機に、シェアを奪われてしまいます。これは前回“メタボ”と称した製品仕様になっている状態です。プラットフォームは“メタボ”ではなく、“スリム”な仕様でつくり、多くのユーザーにぴったりのオプションを取り付けることで、きめ細やかで多彩な品揃えを用意できるようにしたいものです。