応用分野別のMEMSの市場規模予測(単位:100万ドル)
応用分野別のMEMSの市場規模予測(単位:100万ドル)
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 ニッチな役割を果たしていたMEMSが巨大な市場を形成しつつある。多くのMEMSが工場で生産されるようになり、CMOSファウンドリやファブレス・メーカーにとってMEMSはアウトソーシング・モデルの一つとなりつつある。商品生産力の最大化、コストの削減、独自の知的財産の流出阻止に取り組んでいる大手CMOS企業にとって、MEMSの成長は魅力的であり、誰もが欲しがるMEMS技術を所有者として、もしくは顧客として手に入れようとしている。このようなことが仏Yole Developpement社の調べで明らかになった。

 大手CMOSメーカーは量産型の加速度計や発振器には未だ興味を示していない。しかし、カナダMicralyne社などの企業は、ファウンドリの統合を予測している。ICやセンサのメーカーや潜在的なユーザーが、自社製品におけるMEMSラインアップの強化のために、MEMSファウンドリの顧客になるというのがその理由である。仏Tronics Microsystems社のManager of marketing and business developmentであるVincent Gaff氏によると、どの企業も自社製品にMEMSを加えたいと考えているが、社内生産に踏み切るほどの商品や性能を探しあぐねているという。

 アナログ・デバイスの生産者は、MEMSの機能に応じて製品を拡張・差別化し、短期間で性能を高めようと考えているため、すでにあるMEMSの生産者を買収し、自社内に組み入れようとするだろう。カナダDalsa Semiconductor社のVP, marketing and salesであるDonald Robert氏によると、ICのファブレス・メーカーやIDM(Integrated Device Manufacturer、集積デバイス・メーカー)、そしてファウンドリはすべて、そういったことの実現のためにMEMSを商品ラインアップに加えようとしているという。Robert氏は、2015年までに上位30社に大きな変化が起きると予測している。

 DALSA社は、ほぼすべての製品を自社で開発しているが、MEMSやウェハーレベルの大量加工に向けたR&Dセンターを1億7800万ドルかけてケベック州Bromontに設立するために、IBM CanadaやUniversite Sherbrookeと協力している。IDMとの共同開発、共同生産を視野に入れてのことである。

利益と統合モデル

 消費者市場の価格下落圧力を考えると、技術力の向上と生産力の増強のための投資を可能にするだけの十分な利益をあげることは、独立したMEMSファウンドリ(どのファウンドリの年間売上高も3500万ドル以下である)にとって今後5年間で最も大きな挑戦になるだろうとRobert氏はいう。

 ファウンドリはまた、システム・インテグレーションを推し進めている。米国Integrated Micro Technology(IMT)社のCEOであるJohn Foster氏は、その例としてIMT社の開発したセルソーターチップを挙げる。それには使い捨てのテスト・パックとリーダー(reader)も含まれる。MEMSはますます効率的に、また複雑になってきていて、最終的には2つのモデルに行き着くだろう。専門技術が独自のセールス・ポイントや製品化のスピードをもたらす分野ではデバイスを開発し、そういったものを持たない場合は、商品の差異化ができないということだ。

 しかし、どのファウンドリがこの範囲を最も上手にカバーしているのだろうか? 生産量と商品価値の最も良いバランスを取るにはどうしたらいいのか? MEMSはどの程度まで大きく、また安くできるのか? CMOSはどこまでニッチな市場に特化させることができるのか?

 大手のIDMがMEMSの生産、質、統合、低コスト生産の最適化を支配している。すべての段階で利益を得ているのだ。しかし、彼らは効率的な設備投資をする必要がある。米GE Sensing社やソニー、イタリアOlivetti社は製造工場の稼働率を上げるために生産を請け負っている。Robert Bosch社はファウンドリのサービスを限定的に再開した。同社はマルチ・プロジェクト・ウェハーを試作して使用している。顧客はBosch社の標準技術を使うことを前提として、このサービスを利用できる。

 米Delphi社やドイツContinental社といったMEMSメーカーでさえも、外部のファウンドリを利用し、我々の調査では現在、5つの主要なシステム・メーカーが外部のファウンドリの活用に興味を持っている。それはファウンドリ・ビジネスに3500万ドルの売上増をもたらすことになる。

経験が各セクターにおける技術を活用させる