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コラム

POPの導入で改善活動を促進,作業効率高めるため生産設備も自社開発〔日本容器〕

2010/09/28 12:00
森野 進=日本起業家新聞社
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出典:日経ものづくり,2010年2月号 ,pp.97-99 (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

日本容器のここがすごい!

ブロー成形による異形部品の多品種少量生産が得意。POPシステムの導入による生産性の向上など,合理化策も注目される。金型製作から部品組み立てまでの一貫生産で,短納期にも対応する。

 日本容器は,兵庫県丹波市に二つの工場を持つ樹脂成形加工会社。金型製作から成形,仕上げ加工,組み立てまでの一貫生産体制を取っている。中でも得意としているのが,中空部品の成形である。19台のブロー成形機と4台の射出成形機を擁し,主に自動車用インテークパイプ(吸気管),産業機械用の外装部品,農業機械用の燃料用タンクなどの中空部品の製造を手掛けている。「多種少量の異形部品を短期間に造る」(同社常務の上野修嗣氏)のが身上だ。

POPで現場をきめ細かく把握

POP端末
POP端末
POP端末に表示される手順に従って,作業の着手/終了を端末に入力しながら成形作業を進める。下に見えるのが秤量器。
バリ取り作業
バリ取り作業
ブロー成形には欠かせない。処理時間に個人差が出やすいが,POPデータを活用した日々の改善活動によって徐々に均一化が進んでいる。
レゾネータチャンバの加工例
レゾネータチャンバの加工例
ブロー成形したダクトに,射出成形機によるインサート成形品を溶着して一つの部品にしたもの。
自社開発したブロー成形機
自社開発したブロー成形機
最適な成形条件や位置決めデータを品番ごとに登録してあり,容易に段取り替えできる。
日本容器常務の上野修嗣氏
日本容器常務の上野修嗣氏

 ブロー成形は,射出成形などに比べて成形時の条件出しや調整が難しい。バリ取りなどの手作業も含まれるため作業の標準化が困難で,作業者のスキルが生産性や品質に影響しやすい。実際,日本容器でも作業者によって不良率やタクトタイムが違う。加工中に仕上がり状態を見ながら成形条件を微調整するため,稼働と停止の繰り返しを余儀なくされる場合もあった。

 こうした状況で生産を効率化し業務改善を図るには,作業状況のきめ細かな把握が欠かせない。そこで同社が着目したのが,POP(Point Of Production,生産時点情報管理)システムだ。工場現場の生産情報を情報発生源である機械,設備,作業者,ワークなどから直接収集し,リアルタイムで現場管理者に提供するもの。2006年10月から導入準備に取り掛かり,2007年11月から運用を開始した。

 同社では,23台の成形機すべてにタッチパネル式のPOP端末,および秤量器を設置し,POPサーバを介して稼働データを収集している。作業者が成形機の電源を入れると,生産計画に沿ってPOP端末の画面に品番や品名,予定数などの作業指示が表示される。作業者はその画面の指示に従って作業を進め,着手や終了,稼働停止理由などの情報を入力していく。例えば段取り替えのボタンを押すと,作業の目標時間のカウントダウンが始まる。それを超過すると赤ランプが点滅するため,作業者は直ちに,表示されている非稼働理由を選んでボタンを押すといった具合だ。POP端末を通じて作業進ちょくを入力しながら業務を遂行することで,書き忘れや記入漏れ,誤記入といった手書きの日報で発生しがちなミスを防止でき,正確な情報を収集できる。

半年で設備効率が15%向上

 日本容器ではPOPシステムを活用した改善活動として,保有設備がどれだけ有効に活用されているかという指標「総合設備効率(=時間稼働率×性能稼働率×良品率)」の向上に取り組んでいる*1。例えば,同社の成形品には約260の品番があるが,作業者にはそれぞれ得手/不得手な品番があり,同じ仕事でも作業が速い作業者と遅い作業者がいる。POP導入前はそれを考慮せずに,作業者に担当品番を割り振っていた。だが,POPデータの分析によって作業者ごとの得手/不得手が明確になった。そこで,それを加味して品番を割り振るようにしたところ作業効率が上がったという。何よりも「客観的なデータを得ることで,作業者自身が改善意欲を持つようになった」(上野氏)。

 POP端末のそばに秤量器をセットし,成形品の質量を随時POPサーバに送信する仕組みも設けている。空気で膨らませて成形するブロー成形は,肉厚の厳密な制御が難しい。成形条件のわずかな違いや作業者のスキルによって肉厚が変わる。そこで,成形品の質量を管理指標として,品質を担保しているのである。秤量の履歴を調べることで,良品や不良品の多い作業者も特定でき,対策を講じやすくなるという。POPの導入直後は60%程度だった総合設備効率は,半年後には75%と約15%も改善した。同社では今後もPOPを柱に改善活動を続ける考えだ。

*1 時間稼働率は稼働時間÷就業時間,性能稼働率は現在の生産速度÷機械の最高生産速度,良品率は良品個数÷生産全個数時間で計算する。例えば,時間稼働率,性能稼働率,良品率がそれぞれ90%の場合,0.9×0.9×0.9で総合設備効率は72.9%となる。

最適成形条件を登録

 日本容器の主力製品はブロー成形部品だが,ブロー成形と射出成形のコンビネーション加工も手掛ける。これは,ブロー成形ではワーク内面の造形や金属部品のインサート成形が困難なため。例えば自動車用のレゾネータチャンバ(消音ダクト)の加工では,射出成形機で金属部品をインサート成形し,それをブロー成形で造ったダクトに溶着させてユニットに仕上げている。射出成形だけで造る会社もあるが,「金型製作が容易なブロー成形と組み合わせた方が,多種少量加工に対応しやすい」(上野氏)という。

 得意とするブロー成形の生産性を高めるため,成形機も内製する。同社の成形機の特徴は,操作性の良さにある。作業しやすいように材料投入口の開口部を広くしたり,市販機種よりも重心を低くして安定性を高めたりしている。最適な成形条件や押し出し機のヘッドの位置決めなどのデータを品番ごとに登録する機能も備える。これにより,操作パネルから品番を選択するだけで適切な成形条件を再現でき,段取り替えの時間を短縮できた。2001年から製造を開始し,現在同社内で5台が稼働中。同業他社への外販もしている。

 成形機の開発は,10年ほど前に使用中の成形機のメーカーが倒産したことが発端となった*2。購入を希望する同業者もおり,現在は計画生産しているという。

*2 機械のメンテナンス要員として,倒産した成形機メーカーの技術者を採用していた。1年ほどして一部の成形機が故障したため,その技術者に代替機の製作を委ねたところ,予想以上に使いやすい機械ができたという。

日本容器
所在地:大阪府豊中市
日本容器 資本金:5000万円
従業員数:64人
売上高:12億円
主要生産品:自動車用吸気パイプ,産業機械用外装部品
得意な技術:ブロー成形
主要な設備:ブロー成形機,射出成形機,マシニングセンタ,POPシステム
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