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コラム

【ボストン紀行(1)】あと10年で半導体は中国が仕切る

2010/08/25 10:00
藤末 健三=早稲田大学客員教授,参議院議員
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 2010年8月9日から13日までボストンを訪問した。長い間、国内でバタバタとしており、海外に行く機会がなかったので、旧交を温めるとともに、最先端の研究を見ることが目的だった。いくつかの研究室を訪問したので、そこで感じたことを、4回に分けてまとめてみたい。第1回目となる今回は、ボストン訪問の際に最も強く感じた「中国の台頭」についてまとめてみる。

MITの半導体研究所は中国人研究者が最多

 例えば、訪問先の一つとして米Massachusetts Institute of Technology(MIT)のMicrosystems Technology Laboratories (MTL)を訪ねた。MTLはMITの半導体製造工場的な役割を果たしており、新材料半導体の研究とともに、研究者が設計したチップの製造を行っている

*米国では、MITだけでなく、Harvard University、Stanford University、University of California BerkleyがMTLと同様の半導体製造研究施設を有している。案内してくれた教授は最先端設備の導入競争が激しいと言っていた。MTLも新規に200億円の設備投資が必要で、この資金を集めないと新しい設備に切り替えられないとのこと。Harvardがすでに新施設を作り始めたのであせっているようだった。ちなみに、わが国では半導体製造施設を保有する大学はない。

 一番印象的だったのは、留学生・研究者の人数が現在、一番多いのは中国だという話だ。その次が韓国人で、日本人は数人ということ。この話を聞いて思ったのは、あと10年もすればMTLで研究した中国人が本国に帰り、おそらく新たな半導体ビジネスを立ち上げたり、あるいは既存のビジネスを加速させたりするであろうということだ。

中国人を積極的にスカウトするハーバード大

 Harvard Universityでは,まず環境分析(大気)の研究室を訪問した。そこの研究室には20人弱の研究者がいる中で、アメリカ人は一人しかいない。日本人研究者に話を聴いたが、「教授が中国で研究者をスカウトしている。中国では優秀な研究者が集めやすいらしい」と話していた。実際に北京大学出身の女性研究者と会ったが、相当スマートな印象だった。学問に国境はないとは言え、彼らが中国に帰国すれば、中国の研究レベルは急速に進歩するのは間違いないだろう。

研究室で中国人の研究者に挨拶をした。奥の掛け軸に注目!

 さらにHarvard Universityのバイオサイエンスの研究室も訪問した。ここではねずみの脳に電極を差し、特定の匂いを認識させるような電気信号を送信するということを研究していた。まるでマトリックスの世界である(次回に詳報)。

 研究の内容にもびっくりしたのだが、さらにびっくりしたのは「その研究室の国際性」だ。廊下に世界地図があり、研究者の出身地にピンがさしてあるのだが、なんと米国よりも海外が多い。もちろん中国にも5本くらいのピンが刺さっていたが、アフリカやインドにもピンが刺さっていたのには驚いた。ちなみに日本にもピンが2本刺さっていた。

研究室の廊下にあった地図。ピンが研究者の出身地を示している。

 このようにMITやHarvardという世界最先端の大学で、多くの中国人研究者が活躍している。中国の技術はまだまだ日本に追いつかないという話も聞くが、それは中国本土だけを見た話ではないだろうか。米国の最先端の大学で研究を進めた中国人たちが中国に戻った時、中国の科学技術の力は急激に進歩するはずだ。そのことを前提にわが国の科学技術政策を考える必要がある。

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