時刻を狂わす実行犯は誰だ?

 宇宙空間にある人工衛星の表面温度は,太陽光が当たっているかどうかで非常に大きく変化する。その温度差は実に数百℃。温度差があれば,物質は膨張したり収縮したりと体積が変わり,変形するのが世の常だ。

 ところがこの熱変形は,人工衛星にとって都合が悪い。特に,センサや望遠鏡などのミッション機器を搭載する構造体では,ちょっとした変形によってミッション機器が向いている方向や相対的な位置関係が変わってしまうからだ。ミッション機器が当初の性能を発揮できなくなる恐れがある。

 そこで三菱電機は,ミッション機器の搭載位置や角度が温度変化によって影響を受けにくい人工衛星の構造体を開発した1)。その構造体は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製で,三角形と六角形の格子を持ったグリッド構造(写真)。CFRPそのものは温度差によって変形するのに,そこに取り付けたミッション機器の位置と姿勢は変化しないという。そのカラクリとは一体どのようなものだろうか?