注射器なのに針が見えない、その理由は

 デザインは喜怒哀楽の「怒」や「哀」を解決する手段——。

 大阪大学大学院教授の川崎和男氏は,自らのデザイン哲学をこう語る。ここにある注射器も,同氏がその理念に基づいて計算した形だ。

 注射器といったが,針は上部の筒の内側に見える黄色の部分に固定されており,この段階では筒の中に完全に隠れている。さらによく見ると,下の円筒の方が 上の円筒よりもわずかに細い。直径は,上部が12mm,下部が9.4mmで,実はこの二つは別々の部品だ。使用する際は,まずドーナツ状の部分を境にして 二つにすることから始まる。

 当然,注射を打つのだから針を出さなければならないが,どのようにして針を動かすのか。わざわざこのような仕掛けにした狙いはどこにあるのか。

わざわざこのような仕掛けにした狙いは?