6番のグラフの比較。左がテスト1。右がテスト2。
6番のグラフの比較。左がテスト1。右がテスト2。

 「6番を見てください。テスト1、テスト2のいずれの場合でも、最初急激にその部分の脳が使われ、一旦落ちてから再びあがっていますね。6番はおおよそ脳の左半球に当たる部分ですね」と、牧氏は6番のデータについて説明してくれた。確かに、その波の形には違いがあるものの、上がって落ちるという動きをしている。

 なぜ一旦下がったのだろうか。自己分析をすると,まずスケッチブックに描き込んだ場合は、

(1)始めは脳裏に浮かばせたテニスのフォームを思い浮かばせた
(2)部分部分のアイデアを出してどう描こうか考えた
(3)アイデアを絵を描きながらスケッチブックに描いた
(4)また脳裏のフォームに戻ってその先のアイデアを思考した

この四つのステップをそれぞれを短い時間で小刻みに繰り返していたように思う。一旦グラフが下がったのは(3)の部分ではないだろうか。紙とサインペンに意識が行き、描き出す行為そのものに集中力が移っていたと思われる

 一方で、モバイル機器にテキストを打ち込んだ場合は、

(1)先ほど考えたテニスのフォームを脳裏に浮かばせた
(2)何というタイトルにしようかと考えてからテキストとして打ち込んだ
(3)どのようなアイデアを書こうかと考えた
(4)先ほど脳裏に描いたフォームイメージを解説するようにテキストにした

テスト2の10番のグラフ
テスト2の10番のグラフ
テスト2の13番のグラフ
テスト2の13番のグラフ

 どちらの場合、も一旦脳裏にイメージを浮かばせてから絵なりテキストなりに表現の仕方を考える段階が中段にあった。もしかするとそれがグラフが一時下がった原因かもしれない

 さらに牧氏は以下のように分析を続ける。「もう一度10番に戻りますが,テスト2の方を見てください。スケッチブックの結果に対して、モバイル機器でアイデアをテキスト化した場合は、先ほどと同様に急激に血が集まるものの、集中は続かず次第にダウンしているようです。テストに慣れてきて緊張が解けたのかな」。たしかにスケッチブックとモバイル機器のデータを比較してみると、違いが見受けられる(あくまで私見です、確かなことは本格的な実験からでないと分からない)。

 この結果は牧氏の発表した研究成果に類似した点がある。牧氏はホームページにおいて『ペンで書く方が脳への負荷が高いということで、「ペン入力は脳をはぐくむ」と結論づけることができます。先にお話した脳の進化の過程の中で考えると「知性の時代」に属する活動です。ペンで字を書くことを推奨する「書育」は、脳への負荷が高い、つまり脳をはぐくむ活動であるという観点を重視していくべきではないかと思うのです』と分析している。

 「ふむ、スケッチブックに比べてモバイル機器では13番が逆に下がってますね。13番はおおよそ右半球に当たる部分です。何かをさせるためにあえて活動しないのかも。脳内ではあらゆる事象の相互作用から物事を考えているのですよ。“デフォルトモード”あるいは“レスティングステイツ”と言って、何も考えない脳も重要なんです。脳が休んでいるように見えるときにもエネルギーを90%以上使っているという研究報告があります。まだ、脳が休んでいるように見えるときに何をしているのかは、わかっていないんですが、デフォルトモードの最新の研究結果から、赤ちゃんの脳発達の様子を観察できる可能性も示されています。」

テスト2のビジュアルグラフ
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