中国は,面積で日本の26倍,人口も日本の10倍の約13億人いる巨大な国である。この広大な国土と人口を背景に,これまで様々な産業で世界の製造拠点になってきた。太陽電池生産においても,2000年以降のヨーロッパでの再生可能エネルギーに対する旺盛な需要に対応するため,中国がその製造を担ってきた。

中国のエネルギー事情

 人口が多く,工業生産が盛んな中国では,エネルギー消費量も多い。中国国内の2009年のエネルギー必要量は約30億トン(石炭換算)であり,これは日本の3~4倍の消費量である。世界第1位のエネルギー消費国である米国とほぼ肩を並べている。さらに,2000年代に入ってからの高い経済成長に伴って,エネルギー消費量も年率10%前後の急激な増加を示している。過去10年前のエネルギー消費の増加量は,日本が2.0%増,米国が7.3%増であるのに対して,中国は93.8%増となっている。このままの割合で増加すれば,2020年には40億トン以上に達する見込みである。

 この結果,需要に供給が追いついていないという課題や,化石燃料を消費していった場合の温暖化ガス排出の増加といった課題が出てきており,国全体のエネルギー調達戦略が重要視されている。

国内市場の形成を目指す中国の太陽光発電産業

 今後の継続的な経済成長を支えていくためには,1次エネルギーだけに頼らずに,再生可能エネルギーの割合を増やしながら,安定的なエネルギー確保を進めていくことが重要な課題となっている。太陽電池に関しても,これまで中国は輸出一辺倒の製造国だったが,太陽光発電の利用を国内に広めていくことが必要になってきており,政府および産業界が一丸となって取り組み始めている。

 再生可能エネルギーの中国国内での設置見込みとして,2010年は全エネルギーの10%,2020年には15%に高めることを目標としている。個々の目標値としては,「2020年に,風力100GW,太陽光発電20GW,太陽熱温水300万m2以上」とし,同時に全体のエネルギー効率を「15%削減する」ことを掲げている。この目標値に関しては,現在も議論を重ねており,変わっていくことも予想される。

 このような状況の中,大型太陽光発電所の建設が中国各地で進み始めた(図1)。今後,中国の太陽光発電市場が世界市場の平均的な率で成長すれば,2020年には40GWの導入量になるとも予想されている。このような大きな市場を生み出すために,国による政策補助と発電コスト低減に向けた産業努力の両輪が動き始めている。

図1 最近,中国国内に建設・運営開始された大型発電所
2010年4月上旬までのデータ。このほかにも建設中のプロジェクトが多数あり,国内の太陽光発電は,着実に増加している。
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