前回のコラムでは2010年のテレビ市場拡大のチャンスを分析し,代替需要(買い替え需要),新興地域でのFPDテレビの比率拡大,「LED TV」と呼ばれるLEDバックライト搭載液晶テレビ,3Dテレビ,“クロスオーバー・テレビ”などについてまとめた。

 今回は,その先のテレビ市場について,表示素子,画面サイズ,地域,価格面の分析,予測を行った。

市場変化の要因

【1】市場の変数

 全テレビ市場の成長と縮小に影響を与える要因には,様々なものがある。例えば,経済状況,国家政策,放送のデジタル化,世界的なスポーツ・イベントの開催,為替などのほか,新たな表示素子や製品,機能の登場,買い替え需要の発生周期,テレビ市場の飽和度,パネル部材の需給など,多くの要因が有機的につながり,市場の行方を左右する。

【2】成長要因と阻害要因

 2010年以降の市場では,成長要因と阻害要因のどちらが多いだろうか。

 これまでのテレビ市場のトレンドを振り返ると,成長要因の方が多く,かつ強いと判断できる。まず,低迷していた景気が回復に向かい,デジタル・テレビへの移行地域も増加する。中国では液晶テレビの販売台数が伸びており,代替需要が拡大している地域も多い。さらに,LEDバックライト液晶テレビや3Dテレビ,IPTV(internet protocol terevision)などが登場,サッカーのワールドカップ大会も2010年上期に開催される。

 一方,阻害要因にはどういったものがあるだろうか。

 まずは経済状況である。回復に向かってはいるが,再び下降する可能性も否定できない。特に地域では,東欧での景気好転を判断するのは時期尚早だ。また,EU諸国やアジア太平洋地域では,一国が危機に直面すると周囲の国々との関係の深さから,ダメージが膨らむ場合が多い。

 しかし,全般的には市場は好調に推移しており,新興地域のGDPも伸びている。また,オーストラリアなどで出口戦略が実施されたが,消費は落ちておらず,その余波を吸収する様子を見せている。

 成長要因については,各国の状況に応じてその重心を変更する必要がある。

世界のテレビ市場(左軸・棒グラフが台数ベース,右軸・折れ線グラフが金額ベース)
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