すべては「サスティナビリティ」に収束へ

 無限のように思えていた地球の能力にも限界がある、ということに目を向けさせたのは、いわゆる「地球温暖化」問題でした。しかし地球温暖化は、数ある環境問題の中のごく一部でしかありません。時間の経過とともに、水・資源・エネルギーなどの諸問題を包括しながら、循環型社会をめざす「サスティナビリティ」という概念へと変わっていくでしょう。サスティナビリティのために「再生可能エネルギーの利用」や「再資源化」を進めていけば、必然的に環境問題を解決することにもなり、ことさらCO2による「地球温暖化」だけを取り上げる意味はなくなります。地球温暖化問題は、“発展的解消”というかたちで収束に向かうことになるでしょう。

 どのようなビジネスも、社会のニーズを受けて成り立っています。社会が変わるということは、必要とされるビジネスもまた変わるということです。今大切なのは、一度立ち止まってこれまでの常識を見直し、外に広く目を向けてみることです。環境が180度近く変われば、これまでの社会の常識が同じように通用するとは限らないからです。

 今のビジネスや業界は、20世紀社会の常識やニーズを受けて構築されたものです。成長期にあった20世紀型のビジネスは、右肩上がりの経済成長や物価の上昇が半ば常識化して、いかに効率よく生産し、資源をどれだけ多く消費するかを競ってきました。企業も、各々の利益をひたすら追求すればよかったのです。

 しかし、これから「資源ナショナリズム」の機運が高まっていく中で、ビジネスでは「生産」だけでなく「調達」が重要になってくるでしょう。将来にわたって社会を維持するためには、可能な限り地球や社会にマイナスを与えないように、あらゆるビジネスを「持続可能」なかたちに再構築する必要があるのです。これまで「消費」する/させる一方であったものを、「循環」を強く意識したものへと変えていかなければなりません。

 理想的なのは、再生可能エネルギーを100%使って生産し、使用後は資源を100%回収できる状態にすることでしょう。「再資源化」は、環境保護という“きれいごと”のためではなく、自らのビジネスを持続させるための「リスクマネジメント」として捉えるべきなのです。

 複雑なものを作れば、再資源化はより難しくなります。そのため、できるだけシンプルな作りがいい、という考え方がこれから広がっていくでしょう。また、人間の力で元に戻すことができない資源やエネルギーなどは、できるだけ使うのをやめようという意識が強まっていくと考えられます。

 わかりやすい例では、「環境対策車」として好調な販売を続けているハイブリッド車が挙げられます。ハイブリッド車が謳う「環境」とは、ガソリン車から見れば燃料の消費が半分で済むということ、すなわちCO2の排出量が少ないということです。しかし、電気自動車から見てみれば、化石燃料(ガソリン)を消費することに変わりはありません。ハイブリッド車はエンジンとモーターの両方を搭載するため、より多くの資源が必要になります。構造が複雑になれば、それだけ製造や分解により多くのエネルギーが必要になります。電気自動車の本格的な実用化が始まれば、ハイブリッド車に対する評価は一転するでしょう。