第1回:LSIの信頼性保証を取り巻く現状
まずLSI技術そのものについては,LSIの高性能化,高集積化は止まることを知らず,現在も“4年で3倍に集積度が向上する”というムーアの法則は継続している。その基本にあるのは,比例縮小則(スケーリング)に基づく微細化技術である1)。しかし微細化のために必要になる技術は年々高度化している。この結果,LSIの高性能化と高集積化のためには,単なる寸法の縮小ではなく,新しい材料やデバイス構造が必要になっている。具体的には,新材料としては高誘電率(high-k)ゲート絶縁膜,Cu配線,低誘電率(low-k)層間絶縁膜などであり。新構造としてはSOI(silicon on insulator)構造やマルチゲート構造などがある。このような新材料・新構造を導入した先端CMOS LSIの断面構造を図1に示す。このような新材料・新構造の導入は,従来は問題視されなかった故障モードの顕在化や新たな故障モードの発生を招き,信頼性にも大きな影響を与えるようになってきた。
1) R. H. Dennard , et al., ‘‘Design of Ion Implanted MOSFETs with Very Small Physical Dimensions,’’ IEEE J..Solid-State Circuits SC-9, 256-268 (1974).
次にLSIの応用先である各種エレクトロニクス機器については,例えば家電製品や携帯機器などの製品寿命は短く,そこに使われるLSIの寿命も短くても良い状況になっている。逆に,通信インフラ機器,航空用電子機器などは10〜20年の長期間使用される。このようにLSIの用途拡大と共に,その用途によって使用期間や要求される信頼性も異なっている。また,半導体デバイスは,現実としてコスト競争下にあり,高信頼性が要求される車載機器や宇宙搭載機器に使われるLSIでさえ,低価格化が要求され,低コスト化への圧力は強いものがある。多種多様なLSIで要求される多様な信頼性保障要求に低コストで対応する必要が出てきた。
最後にLSIメーカーの業界構造についても,大きな変化が起きている。LSIの設計から製造までを1社で担う垂直統合型から,設計と製造を別々の会社が担当する水平分業型へという構造変化が起きている。こうした変化に伴い,信頼性保証が1社内で済む従来の体制から,今後は多社間にまたがる信頼性保証体制が必要になる。そこでは,各社間の責任分担やインターフェースの取り方などが問題になる。信頼性保証の複雑性を増している。
以上のような変化がある状況でも,LSIの信頼性低下は許されず,従来並みの信頼性確保が要求される。その一方でLSIの高密度化は,当然のことながら一つのLSIに集積化されるMOS FETや抵抗など素子数の飛躍的増加を意味し,その結果として1チップ当たりの信頼性が変化がないことはその中に集積されている素子当たりの信頼性を大幅に向上しなければならないことを意味する。このような状況で,従来と同様な信頼性保証手法のままでLSIの信頼性を維持するには限界がある。すなわち,信頼性保証の考え方や手法の見直しが要請されている。
本連載では,現在のLSIの信頼性保証の置かれた状況を概観し,今後の信頼性保証のあり方,手法について提言する。このため,まず信頼性保証の基本的な考え方と従来方法を概観し,次に半導体技術の進化とそれに伴う信頼性上の課題を指摘する。この上で,新しい信頼性保証のパラダイムを提示する。
バックナンバー
- 第4回:新しい信頼性保証のパラダイム 2010/04/12
- 第3回:LSIの技術進化と信頼性保証 2010/04/05
- 第2回:LSI信頼性保証の基本的な考え方と従来方法 2010/03/29
- 第1回:LSIの信頼性保証を取り巻く現状 2010/03/23














