平成22年度に関しては、執行における連携を確実に行うよう力を尽くす所存だが、やはり直近の未来に、JAXAの位置づけの見直しを含めた、政府の宇宙政策推進体制の整備と宇宙政策のさらなる法整備が必要だと考える。

 特に体制については、宇宙開発戦略本部の総合調整権限を強化するために出向でない職員を配置するとともに、調査研究を行う独自の予算を持つべきだ。そして国家戦略局との連携を深め、宇宙政策関連予算の総合的な割り振りを行うとともに、宇宙産業の発展を支援するための政府系金融支援策(政府系融資や貿易保険など)の企画立案もできるようにすべきである。

 近い将来、宇宙政策は内閣府傘下の宇宙局により一元化し、JAXAはその傘下で完全に管理する計画である。今後数年間の移行期間は宇宙開発戦略本部も残すが、近々に宇宙局に吸収されるようにしたい。実は、宇宙基本法は民主党4人のメンバーで作ってきたのだが、今回の政権交代により藤末以外みな政府・党の役職に就いてしまったため、宇宙政策をプッシュする力が足りなくなってしまった。そのため、当初の宇宙基本法の案では「宇宙局を1年後に設置する」とあったが、実現は先送りとなってしまった。また、基本法の附則にある「この法律の施行後一年を目途として、独立行政法人宇宙航空研究開発機構その他の宇宙開発利用に関する機関について、その目的、機能、業務の範囲、組織形態の在り方、当該機関を所管する行政機関等について検討を加え、見直しを行うものとする。」についても力が及んでいない。今夏参院選が終われば、内閣の体制強化ができ、動き出せると確信している。もうしばらく、お待ちいただきたい。

 また、法整備については、様々な国際条約に対応した法整備がまだ行われていない。例えば、宇宙条約、宇宙救助返還協定、宇宙損害責任条約、宇宙物体登録条約、月協定などの宇宙関連条約がある。これらの条約に対応した国内法がほとんど整備されておらず、今後宇宙の民間企業による利用が進んだ時に備え、法整備を急いで行う必要がある。

 欧州は軍産コングロマリットにより強力に宇宙太陽光発電を進めているという(関連サイト)。わが国も宇宙行政において決して後塵を拝してはならない。

藤末 健三(ふじすえ けんぞう)
早稲田大学客員教授 参議院議員
1964年熊本県生まれ。86年東京工業大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に行政官として入省。95年マサチューセッツ工科大学経営学大学院に留学、96年には同大学院とハーバード大学行政政治学大学院で修士号を取得。99年東京工業大学で学術博士号(Ph.D)を取得し通商産業省を退く。同年東京大学大学院工学系研究科専任講師に就任、2000年から同総合研究機構助教授。04年民主党参議院選挙に比例区で当選する。早稲田大学客員教授。公式ブログはhttp://www.fujisue.net