最近,LEDバックライト液晶テレビの話題がにぎやかである。韓国メーカーはLEDバックライトを搭載した液晶テレビを「LED TV」と呼んでブランド・イメージを高める戦略を取っているが,この表現は消費者に誤解を与える誇大広告に当たる可能性が高い(LEDユニットを敷き詰めた表示装置と混同される)と筆者は考えているので,以降では「LED LCD TV」と表記する。このLED LCD TV市場は,先行する韓国Samsung Electronics Co., Ltd.が牽引役となり,今年から大幅に伸びると予想されている(Tech-On!関連記事1Tech-On!関連記事2)。シャープも超低消費電力を“売り”とする次期モデルにLEDバックライトを搭載するもようである(Tech-On!関連記事3)。

 ここへ来て液晶テレビ・メーカー各社がLED LCD TVに本腰を入れ始めたのには理由がある。

 まず,白色LEDの発光効率が年々向上し,量産効果により単価も安くなってきたのが第一の理由である。既に高演色型でも100lm/W程度の発光効率が実現されており,2015年頃には150lm/W程度に達すると思われる。LEDバックライトの液晶パネルが最初に登場した頃には,RGBの3色のLEDを適用し,NTSC比100%以上という色再現範囲の広さを売りにしていた。ただ,消費電力は約2倍程度と大きく価格も高価で,ごく一部の高級モデルにしか適用されなかった。白色LEDを使用すれば,色再現範囲はCCFL(冷陰極管)方式に比べてそれほど大きな改善にはならないが,消費電力とコスト面では十分競争できる。

 第二の理由は,導光板技術の進歩により,エッジライト方式でも直下型方式でもLEDの薄さを生かしながら,均一な拡散光を得ることができるようになった点である。この結果,従来より薄型で,全点灯時の消費電力はCCFL方式と同等かそれ以下,コストもほぼ同等,というモジュールが実現できるようになってきた。LEDバックライトは表示中の輝度を変化させることが容易なので,携帯機器で広く用いられているダイナミック・コントラスト調整技術も適用可能である。従って,全点灯時の消費電力に比べて,標準的な画像の消費電力を減らすことができる。つまり,平均的画像ならCCFL方式より確実に低消費電力化が可能である。もしローカル・ディミング(局所輝度制御)技術を適用すれば,さらなる低消費電力化とコントラスト比の向上も期待できる。