ロッテの「クーリッシュ」というアイスクリームがある。吸い口のあるパウチ容器に入ったアイスで、チューチューと吸いながら食べる。開発のコンセプトは、柔らかで食感が良く、滑らかに飲めるという点にあったようだ。微細な氷を混ぜ込む新技術で、後味さっぱりの冷涼感が楽しめ、それを最も引き立たせるマイナス8℃の温度によって、冷たさと滑らかさを同時に味わえる。テレビCMもそのコンセプトを前面に新分野の商品を訴求していた。

 ところが、ネット上の口コミを分析してみると、コンセプトを表す言葉で評価している消費者がほとんどいなかった。「パソコンを使いながら食べられる」「本を読みながら食べられる」「運転しながら食べられる」といった「○○し“ながら”食べられて便利」という書き込みが多かったのだという。開発側が想定していた新しい食感という価値ではなく、“ながら食べ”がしやすいことに消費者は注目していたというわけだ。

 そこで、同社は消費者の声を参考にテレビCMの内容を変更した。「ヨガをしながらクーリッシュ」「ロデオしながらクーリッシュ」といった“ながら食べ”を前面に押し出したのだ。商品の訴求ポイントを変えた決断が、100億円規模を売り上げる大ヒットにつながったのだという。

 商品自体が優れていることは大前提だろう。ただし、その商品の価値をメーカ視点ではなく顧客目線で訴えるという最後の一押しの仕方がずれていたために、姿を消してしまった商品も多いはずだ。その意味では、自分が開発したモノやサービスが多くの人に使われることを夢みる私たちにとって、「作ったモノをどう売るか」というマーケティングまで主体的に関わることは今後重要なことだと思う。

消費者の意見をそのままマーケティングに活用

 以前、私の会社で信頼性のあるWebサイトの条件を調査したことがある。高い評価を得る条件は「情報量が多く」「更新頻度が高く」「消費者の評価が載っている」ことだった。

 企業はこれまで,消費者の評価を自社サイトに載せる取り組みに,実際のところなかなか踏み込めていなかった。だから、どんなに企業サイトを充実させても、結局ユーザーは客観的な消費者の評価を見るために価格比較サイトやブログ検索サイトなどに飛んでいってしまっていた。だが、最近は、消費者の声をそのまま商品の訴求手段として企業サイトで活用する動きも広がりつつある。

 例えば、ブリヂストンは、スタッドレス・タイヤ「ブリザック」の商品紹介サイトで、ブリザックについて書かれたブログ記事を紹介している。自動車のアイコンから飛び出した吹き出しの中にブログ記事の抜粋を引用し、そこから各ブログにリンクを張る仕組みだ。タイヤの記事を書くほどのブロガーなので、ブログ全体が自動車への愛着を感じられる内容のことが多い。

 同じような取り組みは様々な商品分野で見られるようになってきた。