タッチ・パネル用ITOフィルム市場を展望

 タッチ・パネル(タッチ・スクリーン・パネル,TSPとも呼ばれる)は,ITOフィルム,ITOガラス,コントローラICに加え,エッチャントや光学用透明粘着材(optical clear adhesive:OCA)などを用いて製造する。このうちITOフィルムは,タッチ・パネルの上板と下板の役割を果たすとともに,電気的特性を左右する最も重要な部材であり,タッチ・パネルのコスト全体において大きな比率を占めている。

 ITOフィルム市場は,川下のタッチ・パネル市場の拡大により,2008年から2013年まで年平均22%で成長率すると見られる。2008年のITOフィルム市場は,前年比45%増の高成長を記録し,2009年も同23%増の355億円規模になると,われわれは予測している(図1)。

タッチ・パネル用ITOフィルム市場
図1 世界のタッチ・パネル用ITOフィルムの市場展望

韓国の新規企業が躍進

 ITOフィルムは,レアメタルのIn(インジウム)を主原料とするITO(indium tin oxide)をPETフィルム上に成膜して製造する。ITOは透明で導電性に優れ,タッチ・パネルや液晶パネルなどの電極として使用されているが,ITOは金属のため,薄く柔軟なフィルム上に成膜するためには特別な技術が必要になる。

 タッチ・パネル用ITOフィルムは長い間,日東電工,尾池工業,帝人化成などの日本メーカーの製品が主に使用されてきた。しかし,PDA市場が期待を大きく裏切り続けたことで,これらのメーカーは生産能力をほとんど増強してこなかった。そこへ,2007年に米Apple Inc.の「iPhone」と韓国LG Electronics Inc.の「Prada Phone」が登場し,さらに電子機器へのタッチ・パネルの採用が拡大したことで,ITOフィルムの需要は大幅に増加し,生産能力は不足に陥った。

 2008年におけるITOフィルムの世界市場シェアを見ると,日本メーカーが全体の63%を占めている。メーカー別では「2 Layer」という独自品を持つ日東電工が20%で1位,尾池が16%で2位,帝人化成と韓国SKC Haas Display Films社がそれぞれ11%で3位、グンゼが7%で5位、6位以下のメーカーのシェアが合計35%となった。これは2007年のITOフィルム不足により,韓国や台湾などの新規メーカーがシェアを伸ばした結果と見られる。