こんな例がある。園内ではヘリウムガス入りのバルーンを販売しているのだが、通常時に販売するのはキャラクターの顔部だけをかたどったバルーンである。それを、スケシャルイベントが始まると変えてしまう。そのとき「限定」のデザイン商品をその都度販売するのである。

 バルーンは、視覚的にインパクトの高い商品である。購入者だけでなく、購入者が持っているバルーンを多くの人たちが目にするためである。それだけに、「期間限定」商品の販売は来園者を心情的に高揚させ、イベントを盛り上げる効果は高い。「限定商品」の効果はそれだけではない。「その時期しか購入することができない」という商品を作ることで、コレクション意欲を刺激し、さらなる来園動機を促す効果が期待できるのである。

 こんな例もある。園内では数々のぬいぐるみも販売しているのだが、あるときすべて真っ白な「ホワイト」シリーズ」のぬいぐるみを販売した。全身、上から下まで真っ白なので、棚に陳列されていると遠くから見るとえらく目立ち、最初はとても違和感があるものだった。しかし、それをクリスマスに販売すると、「ホワイトクリスマス」のイメージにぴったり合ったのか、かなりの売り上げを記録した。その後も毎年、期間限定でこのシリーズを展開することになった。

 これは典型的な成功事例。期間限定などのスペシャル商品は、ハマれば絶大な効果を上げるのである。けれども逆に、ハズすと「さっぱり」だ。しかもその失敗は、テーマパーク全体の集客数や売り上げにも大きく影響してくる。それゆえ、担当者にとって、イベント毎に変更する商品の開発は、非常にプレッシャーがかかる責務である。

 そんな重圧のなかで、開発者は顧客の「視覚を通してイメージする能力」について問い直す。その認識のもとに商品を生み出し、世に送る。それでも失敗することがある。いや実際には、失敗の方が多いほどだとも聞く。難しいものである。