照明機器市場は現在,世界規模で約710億ドル(7兆円程度)とされる。LED照明に注目が集まるゆえんは,まさにこの市場規模の大きさにある。住宅用や施設用,道路灯など,さまざまな照明分野で既存照明からLED照明への置き換えが期待される。消費電力の低い照明に切り替えようというグリーン化推進の動きは,各国政府の積極的な支援の後押しもあって日に日に活発になっているといえるだろう。

 LED照明への関心度が高いのは,韓国も例外ではない。韓国の知識経済部はLED市場について年平均30%で成長し,2008年には214億ドルだった市場規模が2015年には約1000億ドルにまで成長すると見込む(図1)。この巨大市場に向けて,韓国の競争力を高めることを狙った策を打ち出してきた。


図1 韓国の知識経済部によるLED市場予測
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LED照明拡大には「信頼性」も重要な要素

 製品が広く一般に普及するためには,「信頼性」が必要とされる。それは,LED照明でも同じだ。その点に韓国が注目し,信頼性の確保に直結するLED照明に関する認証基準を他国に先駆けいち早く制定して2009年3月に施行した。LED照明の規格化で中心になったのが,知識経済部技術標準院である。LED照明の規格化は日本でも進んでいるが,韓国が一歩先んじた形だ。

 その背景にあるのは,基準を他国に先駆けて制定することの重要性である。こうすることで,標準化に向けた国際的な活動の中でリーダーシップを取れるとみる。何より,韓国の基準が世界基準となれば,韓国のLED照明産業が活発になるというわけだ。韓国と同様に,日本では特定非営利活動法人LED照明推進協議会が,米国ではNIST(National Institute of Standards and Technology)らが活動をしている。だが,韓国を除き,まだ規格の標準化にこぎつけていない。

 ちなみに,日本では一般的に電気製品の安全性能は電気用品安全法(技術基準別表代8)の基準に準拠することになっている。しかし,LEDは適用外になっているのだ。

47年ぶりに改変したKS認証規格,対象製品をLEDや2次電池などに拡大

 韓国において,LED 照明製品に課せられる認証規格は「KS認証規格」である。正確にいえば,LED照明製品への認証規格はKS認証規格の一部に含まれる。そもそもKS認証規格は知識済部技術標準院が1963年に導入したものであり,今回制定された規格はLED照明にかかわる部分を盛り込むなど一部を改正したもの。KS認証規格は2009年,実に47年ぶりに改変されたことになる。

 KS認証規格とは,韓国産業規格(Korean Industrial Standards)の略称である。産業標準化法に基づいて制定される工業製品の標準規格であり,日本でいえばJIS規格に相当する。この規格は韓国製の工業製品の品質向上,維持などを目的に制定されている。今回,品質管理対象品目の加除,審査基準の見直し,認証システムの改善などが盛り込まれた。対象製品として,新たにLEDや2次電池,有機EL,ディスプレイ部品などの先端産業の48品目を加えた。

 今回の改変した大きな理由は,国内規格の整備と国際競争力の強化にある。加えて,最近の電気・電子製品のリサイクル法やWEEE指令などにより,今までの環境基準の規格を国際基準にまで引き上げる必要があることに対応することを目指している。

 韓国内で製品を販売する場合,輸入製品でもKS認証規格を満たす必要があるため,日本企業も確認する必要がある。海外企業はもちろん韓国内企業でもこの改変により負担が増えることにより何らかの影響は逃れないと考えられる。

 KS認証規格は17部門に分類されており,AからXまでの記号を持つ。LED照明はその中の電機(C)に含まれる。この認証を取得するためには,韓国標準協会へKSマーク取得審査を申請し,その審査を受けなければならない。その際には,許可を得る工場と指定品目のリストの提出が必要となる。