これまで数回にわたり「組織全体のモチベーション向上」について,個人ができることという観点から基本的な解説をしてきました。最後にもう一つだけ,どうしても皆さんに伝えておきたいことがあったので,急きょ追加することにしました。

競争力を強化する

 人類は,生き残るために競争を繰り返しています。この競争は永遠に続いていくでしょう。企業もまた生き物です。生き残るために競争を繰り返していきますし,これからも永遠に続いていくでしょう。

 組織が大きくなれば,自社だけでは処理できなくなり,処理できない分は協力会社に依頼することになります。自動車産業の場合は,1次下請け,2次下請け…,といった具合に,数千・数万に上る会社がつながりを持つようになっています。自動車を造るには,鉄鋼,樹脂,ゴム,ガラスといった素材,電子部品などが必要です。自動車だけでなく,電機,機械などさまざまな業界でそのようなつながりが生まれています。

 しかしながら,組織が大きくなればなるほど,そこに発生する歪(ひずみ)や無駄もばく大な規模になっていきます。国際競争に生き残るには,親会社だけではなく,1次,2次の部品メーカーや小規模の零細企業に至るまで「競争力」を付けねばなりません。

会社同士を競争させる

 こうした状況では,協力関係を前提としつつも,協力会社同士が競争することで,モチベーションが向上するとともに,競争力を付けることができるようになります。現在,実際に行なわれている競争について以下に整理してみましょう。

1. 取引会社同士を競争させる
  • 同じぐらいの規模の会社で,最大10社程度,期間は6カ月程度に設定
  • 各社に5~7人のプロジェクトチームを設立
  • 親会社には専任の担当者(1~2人)を配置し,必要に応じて外部コンサルタントを導入
  • 各社が共通のテーマ(コストダウン,品質改善,在庫一掃,納期短縮など)で競争

2. 教育と実践を並行して行う
  • 上記テーマの実践中に教育を行い,参加企業のレベル向上を図る
  • 競争を通じてモチベーションを高めていく

3. 大々的な報告会と表彰
  • 目標の達成度で順位を決め,表彰を行う
  • 主催者側の役員が必ず参加する
  • 未参加の企業トップも報告会に参加させて,モチベーションを向上させる

4. 定期的にテーマを変える
  • 同じテーマで3年継続したら,4年目からはマンネリ化を防ぐためにテーマや内容を変更する(例:原価低減活動→管理間接部門の改善→物流システム改善→新商品開発競争)

5. きずなを確認する
  • 上記1~4を通じて会社間の信頼関係を醸成する
  • 競争会社間での協力関係を構築する
  • グループとしてのモチベーションを高める