電気自動車としての新しいスタイル

 電気自動車を成功させるには、エンジン車とは一線を画する新しいスタイリングを提示することが重要だ。四輪車の基本形を引きずると、エンジンをモーターに置き換えただけの車になりがちだ。さらにそれを小型・軽量化しようとすると、どうしても「安っぽい車」になってしまう。

 電気自動車であればボンネットはもう必要ないし、ドライブシャフトやギヤボックスも要らない。電気自動車になるということは、「自動車の基本形が変わる」ことを意味する。最近、巷では大型スクーターを多く見かけるが、自動車よりずっと小さくても「安っぽい」と思う人はあまりいないように思う。大切なのは何を基準に比べるかであり、絶対的なサイズではない。

 既成概念を捨て、まず電気自動車の「あるべき姿」を考える必要がある。そのためには、四輪車の専業メーカーにも二輪車メーカーと同じ発想を併せ持つことが求められるのかもしれない。さまざまな規制でがんじがらめな四輪車に比べ、二輪車の環境は自由な発想で新しいものを生み出すのに向いているという理由もある。先進国の価値観を押し付けて、同じ基準の車を持ち込んでも無理があるのだけは確かだろう。

 ただここで気をつけなければならないのは、例えば四輪車メーカーが、二輪車的なまったく新しい概念の電気自動車を開発するチームを結成しても、それを社内に置いておけば、四輪車の価値観、従来のやり方で染まりきった社内外の「外野」から様々なノイズを浴びせられるであろうことである。まったく新しい概念の電気自動車が登場すれば、仕事が減ったり立場を失う役員、社員そして協力会社などが出てくるかもしれない。軋轢が出てくるのは当然なのである。それを想定し、開発チームは別会社にして本体から切り離すなどの工夫が必要だろう。過去には、ソニーがゲーム事業を始める際に、本体から離しソニー・コンピュータエンタテインメントという別会社を立ち上げた先例がある。

 ちなみに、一般にはまだあまり知られていないが、日本で三輪車の運転免許について法改正が進められている。三輪スクーターはこれまで道路交通法で「自動車普通免許で運転ができる」とされてきた。だがイタリアPIAGGIO社製三輪スクーターの登場がきっかけとなって、見直しが行われた。「二輪車の運転特性に似ている」という判断から、本年6月からは前2輪/後1輪の三輪車は二輪免許が必要になる予定だ。今後は同じタイプの三輪車は「二輪車」として扱われる可能性が高い。