趣旨
25年間フラットパネル・ディスプレイ(FPD)開発に携わってきた経験を生かしながら,最新技術の開発動向を分析する。6年にわたり韓国企業に勤めた経験もあるので,日本企業と韓国企業の違いを論じたり,今後日本企業が歩むべき方向について意見を述べてみたい。筆者はエンジニアであり文章を書くことが本業ではないため,読み物としては拙い部分も多々あるとは思うが,この分野にかかわる皆様に話のネタを提供できればとの思いで書いているので,至らない部分はどうかご容赦願いたい。
筆者がディスプレイの分野に入るきっかけとなったのは,1983年,大学4年生の時に京都大学 工学部 教授の佐々木昭夫氏の「フラットパネルディスプレイ概論」というセミナーに大変興味を持ったことである。当時,映像を表示できるディスプレイといえば実質的にCRTしかなかった。そのような時代に,佐々木教授は「液晶ディスプレイは半導体に次ぐ第2の産業の米として飛躍的に発展していくだろう」とおっしゃった。ご存知の通り,その予言は現実になった。その最前線にいることができた筆者は,エンジニアとして本当に幸せだったと思っている。もし,このコラムの読者の中に学生の方がいたら,まだまだ奥が深いこの分野にぜひ興味を持っていただきたい。そして将来エンジニアとして大いに活躍していただけたら,至上の喜びである。
松枝 洋二郎(まつえだ・ようじろう)
松枝コンサルティング 代表
1984年,京都大学 工学部 電子工学科卒。1984年,セイコーエプソンに入社。高温多結晶Si-TFTや低温多結晶Si-TFTを利用した液晶ディスプレイやプロジェクタ,有機ELディスプレイ,システム・オン・パネルなどの開発に従事し,TFT回路の設計を担当する。2002年,韓国Samsung SDI Co., Ltd.に入社。次世代アクティブ型有機ELディスプレイの設計責任者として6年間勤める。2008年末にSamsung SDIを退職し,日本に帰国。現在は松枝コンサルティングの代表として,FPD関連技術のコンサルティングを行っている。