これまでスキルを高めるための方法についてさまざまな角度から紹介してきました。今回のテーマは,私が自身の経験から学んだことです。それは,他人に依存する“癖”をなくし,自分の頭で考える習慣を身に付けるということです。

変化を受け入れる

 コンサルタント会社に勤務して間もなく,私は先輩コンサルタントと一緒に宮崎県にある繊維会社の工場改善の仕事を手掛けるチャンスに恵まれました。その先輩はコンサルタント歴10年以上のベテランで,講演,講義,全体のマネジメント,具体的事例の説明,プロジェクト活動の進行などすべてを一手に引き受けていました。一方,私は先輩のアシスタントという形で議事録の作成,報告書の作成,事務局との打ち合わせといった,どちらかといえば補助的な業務を担当しました。

 コンサルティングのスケジュールは以下のようなものでした。まず日曜日に羽田空港を発ち現地に向かいます。そして月曜日から金曜日までみっちりコンサルティングを行い,金曜日の最終便で東京に戻ります。このサイクルを隔週で回す予定でした。

 そしてコンサルティング開始の日を迎えます。初日は順調に終わりました。ホテルに戻ってシャワーを浴び,ゆっくりと食事を済ませ,先輩とその日の反省や翌日の用意を行いました。

 ところが翌朝,先輩が慌てた様子で私を呼びに来ました。「笠原君,悪いが家で不幸があった,私は午後の便で帰らなければならない。今週の残りは君にやってもらいたい」。

 突然の展開に押し黙ってしまった私を前に,先輩はこう続けます。「君はコンサルティングの基礎を十分知っているから,対応できる。事例については資料がある。それを残していくから,後はよろしく頼むよ」。

 それを聞いた私は冷や汗が出てきました。血の気が引く思いがしました。しかし,悩んでいる暇はありません。決心するしかないのです。私は「変化を受け入れる」決心をしたのです。今思えば,そこには“開き直りの精神”があったと思います。

他人依存からの脱却

 私は,このときほど「他人依存からの脱却」の必要性を感じたことはありません。その日から,ホテルに戻った後は風呂も食事もそこそこに,翌日の仕事に備えることにしました。毎日のように徹夜の状態が続いたことはいうまでもありません。幸い,この難局を無事乗り越えられました。

 他人依存から脱却するには,自分の頭で考えねばなりません。本来,自分で考えるということは,決して難しいことではないはずです。しかし,周囲に頼れる他人がいる場合,習慣としてその他人に依存してしまう傾向があります。それに甘んじていては,土壇場になって困ることになります。平常時から自分の頭で考える習慣を身に付けた方がよいのです。

時間を意識的に確保する

 ただし,自分の頭で考えるには時間と余裕が不可欠です。あまりに忙しいと,どうしても“自分の時間”を持てなくなり,ついつい流れ(他人)に身を任せてしまうのです。

 皆さんは,自分自身のスキルアップのためにも,何とかゆとりのある時間を確保し,自分の頭で考える習慣を身に付けてください。次回は,そうした習慣を身に付けるために,実際に私が使っている「チェックリスト」を紹介します。