今から数年前,ある会社で航空機に搭載する装備品の軽量化プロジェクトを行いました。この活動では,航空機に搭載する装備品だけでなく,航空機そのものに必要な部品や製品の調査も行い,軽量化の手段をさまざまな角度から検討しました。その結果,「1g」の軽量化を追求することによる改善の余地がまだまだたくさん残っているということを実感したのです。

 2008年には,燃料費の高騰により,運賃に加算される燃油サーチャージが非常に高額になったことが話題になりました。一般の乗客にとっては大変なことですが,燃料費が高騰して困るのは航空会社も同じです。航空会社では燃料費節約のための軽量化が経営課題の一つになっており,これまで以上の改善を始めています。そこで今回は軽量化という側面からコスト削減を考えていきます。皆さんの仕事のヒントにしてください。

銀色に光る期待の理由は…

 ジャンボ旅客機の就航時の質量は,約400tです。その内訳は,機体本体に加えて搭載する食料,救命胴衣などを含めた質量が183t。燃料が満タン時で180t。乗客と荷物で32tとなります。

 最近,塗装をしていない銀色に光った航空機を空港で見掛けることが多くなりました。それらは貨物専用機です。貨物専用機のほとんどで機体への塗装を廃止しているのです。塗装分の質量を減らしてコスト削減を図っているのです。塗装を省くことで,ジャンボ機は140kg軽くなり,年間で約240万円のコスト削減になるといいます。

材料そのものも変更対象

 航空機では荷物を運ぶためにアルミニウム合金製のコンテナを多数搭載します。コンテナの質量は1個当たり150kg前後ですが,ジャンボ機の場合には多数のコンテナを積み込みますので,その総質量はばかになりません。従って,多くの会社がコンテナ軽量化の改善を行っています。ある会社ではコンテナの構造を見直し,部品点数の削減,結合部材の変更,補強方法の改良などにより,15kg(約10%)の軽量化に成功しました。

 材料そのものを変更するという手もあります。最近,別の会社はコンテナの材料をアルミニウム合金からガラス繊維強化プラスチックに変更することにより,26kgの軽量化を実現しました。これはジャンボ機1機当たりで約1tの軽量化に相当します。

スプーン2g軽量化の効果は…

 とはいえ,軽量化の対象はこのような目立つ部分ばかりではありません。例えば,ビジネスクラスの機内食用に使うスプーンやフォークも,その寸法を見直すことで1本当たり2gの軽量化を行っています。2gといっても決して捨てたものではありません。この軽量化効果も1機当たりに換算すれば2.5kgの削減になります。ほかにも機内誌に使われている紙を薄くし,ページ数も削減することにより,1冊当たり15gの軽量化。飲料用のペットボトルでも,メーカーに依頼して500mLサイズで1本当たり9gの軽量化に成功しています。

 このような「究極のダイエット作戦」は,航空業界に限らず,自動車や鉄道,船舶に広がっています。皆さんの業界でも軽量化のアイデアはまだまだあるはずです。早速探してみましょう。