もう一つは,「それによってイメージが膨らみ,何かの思考に連動でき,次なるものを連想させ,発展性のある名前であること」である。その名前を聞いたら「ああ,そんなものね」とわかることは必要なのだが,わかった後に何の連想もわかず,イメージが膨らんでいかないものはダメなのである。

 例えば,テーマパークのスタッフを「キャスト」と呼び,そのユニフォーム(制服)を「コスチューム(衣装)」と呼ぶ。単に係員,制服と呼んでしまえば,どんなものかはすぐにわかるけど,そこで思考は止まってしまうだろう。それをキャスト,コスチュームと呼ぶことで「係員プラスアルファの何かをすべきなのだろうか」「制服と何が違うのだろう」と,ついつい想像を膨らませてしまったりする。

 そんなキャストが一定期間のトレーニングを経た後に,独り立ちすることを「デビュー(初演)」と呼ぶ。単なるスタッフではなくキャストなのだということを印象付けるためだろう。キャストだからこそ,決められた文句を機械的に繰り返すのではなく,役者のように心を込めてセリフを言う。それぞれの場面で顧客に喜んでいただくという役を演じるのである。スタッフが「なりきって」いるからこそ,その雰囲気に観客を巻き込むことができるのだと思う。

 こうした,「わかりやすいし,そこから連想やイメージがふくらんでいく」というネーミング手法は,ディズニーランドに限ったものではない。何年か前に私の知人が東京銀座のレストランを改築,改名したのだが,その新店名もそのポイントを押さえたものだと感心した。その名は「TEPPAN RESORT RESTAURANT」。普通に言ってしまえば「鉄板焼店」なのだが,そう言ってしまえば実もフタもない。煙モクモク,座敷に座布団のイメージがただ浮かぶだけである。それをアルファベット表記にすることで「あ,何か違うのかも,何が違うんだろう」と思わせる。しかも,RESORTである。「鉄板のリゾートって何なんだ?」と,ついつい好奇心をあおられてしまう。単純な私などは,「どんな店なんだろう,見てみてー,行ってみてー」と,すっかりその気にさせられてしまうのだ。

 もちろん,どんなに名前がよくても,それだけではダメなのではあるが。