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魅せる裏技

ヘンな帽子の老人に教えられたこと

  • 大住 力=環境経営戦略総研
  • 2009/04/08 00:00
  • 1/3ページ

 米国に「ウォルト・ディズニー・イマジニアリング」という技術者集団の会社がある。総社員数1600名程度。あのディズニー・テーマパークとそのアトラクション(乗り物)の企画やコンセプトの構築、デザインなどを担当する会社である。

 この社名で使われる「イマジニアリング」は、「イマジネーション」と「エンジニアリング」を合体させた造語だという。「私たちのプロセスに秘密はない。ただ、新しいドアを開け、新しいことをして前に進み続けるだけだ。私たちは好奇心に満ちている。好奇心が私たちを新たな道へと導いている。私たちは常に探求し、実験する。これがイマジニアリングだ。イマジニアリングは創造的想像力と技術的ノウハウが一体になったものである」と、あのウォルト・ディズニーが語ったのが語源となっている。この会社に属する技術者は「イマジニア」と称され、ディズニー・グループがこの世に発表する創造物のほとんどは、彼らが生み出した成果によるものだ。

 私が東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドに入社して間もないころ、そのイマジニアリング社の副会長(当時)と言葉を交わしたことがある。一介の新人社員が、イマジニアリングのトップであり、ウォルト・ディズニー本人とも一緒に仕事をしてきたトップ技術者とである。

 それは1992年10月、東京ディズニーランドで新規アトラクション「スプラッシュ・マウンテン」のオープニング・セレモニーが始まる、まさにその時だった。たまたま私の前を彼が通過した。そのとき、私は思わず彼の奇妙な帽子(ハット)を見て声を掛けてしまったのである。ベージュのウールのハットだったのを今でもよく覚えている。当日はまさに式典だったので、彼は首から下はビシッとスーツで身を固めていた。しかし、なぜかその姿に似合わぬハットを被り、しかもそのハットには数え切れないほどのピンバッジが飾られていたのである。

 ピンバッジのほとんどは、おそらくディズニー関連のものだったと思う。しかし、それぞれのバッジが何かを確かめる以前に、そのおびただしい数に圧倒された。被らせていただいていないので解らないが、あんなものを被り続けていたらきっと首が筋肉痛になってしまうだろう。とにかく、ハットのありとあらゆる部分にピンバッジが飾られているのである。

 「素敵なハットですね!」と声を掛けさせていただくと、「そうかい?これは私の全て。この全てが私にとっては大切な宝物なんだ!」と応えてくれた。そして、間髪を入れずこう言い添えた。「何よりも大切なことはプロセスだからね」。そう言われ、私はあいまいな笑顔をたたえ、彼を見送るしかなかった。なぜなら、「プロセスが何よりも大切」の意味がよく解らなかったからである。ただ頭を占めていたのはその一言に対する疑問ではなく、「変わった人だなぁ」とか「やっぱり創造力のある技術者はどこか違うわ」という素人的な感想でしかなかった。

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