ものを設計する際,ある部分の寸法を1mmでも短くできれば,その分だけ材料の節約になります。それによって節約できる質量が1gだとしても,1000個売れる商品なら全体では1kgの節約です。

 このように,単体ではほんのわずかに見える節約でも,それを積み上げていくことにより全体として大きな効果を生み出すことがあります。ひいては,地球環境にも貢献できます。実際に,自動車や家電など工業製品の世界では1mm,1gの改善を日々行なっています。「全体の視点」から,自分が手掛けている改善のインパクトを考えることが,技術者としては重要です。

運搬効率を高める

 筆者がコンサルティングを実施した企業では,このような例もありました。ある家電メーカーで,新開発の冷蔵庫の高さを従来品より5cm短縮しました。そうすることで,運搬時にトラックに積載する積荷の段数を1段増やすことが可能となり,運搬効率が上がるからです。このように視野を広く持てば,わずかな改善や変更によって,全体として多大なコストダウンを実現できるのです。さらに,運搬効率が上がったことで,二酸化炭素(CO2)の排出量も大幅に削減できます。

分解しやすくする

 さまざまな製品でリサイクルが義務付けられるのに伴い,使用済みの製品を材料や部品に分解する必要が出てきました。分解する際は,いかに短時間でできるかが重要になります。時間がかかるということは,人や機械・設備の稼働時間が長いということ。つまり,コストもCO2排出量も多いということを意味しています。そのため,設計時から分解しやすさに配慮することで,リサイクル工程も含めた全体のコストやCO2排出量の削減を意識することが重要になります。また,分解した部品がどのような素材で造られているのか,誰でも一目で分かるような工夫も良いでしょう。「PP(ポリプロピレン)」や「PE(ポリエチレン)」などの表示が見やすい位置にあることが要求されます。

不良品を造らない

 不良品が発生したら検査工程で取り除けばいい――。そんなふうに考えている人はいませんか? 不良品が発生するということは,それを発見したり修理したりする手間や費用が要るわけですから,大きなロスです。処分するにしても,同じです。不良品のようなムダの発生を抑えることが,コストやCO2排出量の削減につながります。

部品の寿命をそろえる

 製品の寿命は,「その製品の中で最も寿命が短い部品」によって決まると考えることができます。つまり,寿命のバランスが取れていないということは,ムダな設計ということです。

 ここでは,扇風機を例にとります。モータの寿命は5年,羽根は7年,台座は10年だとして,どうでしょうか? 台座が10年,羽根が7年持ったとしても,モータが5年で動かなくなったら,ほとんど意味がありません。こうした考えから,家電メーカーなどでは部品の寿命をそろえた設計を採用するようになっています。