PCIの高い日産自動車

●図4 出願件数上位10社の出願件数シェアとPCIシェア
●図4 出願件数上位10社の出願件数シェアとPCIシェア (画像のクリックで拡大)

 図4において,件数シェアとPCIシェアとを比較してみると,日産自動車が10%以上もPCIシェアを伸ばしてトップに立っている。ナビゲーション技術だけでなく,GPS情報に基づいた駆動力の調整など,様々な発明によって,運転者支援を図ろうとしている。同社で最もPCIの値が高かったのは,ハイブリッド車両の駆動制御装置であった(詳細については後述)。

 PCIシェアの2位にはエクォス・リサーチが入った。トヨタ系列の同社は運転者とのコミュニケーションを図る擬人化した装置や,ハイブリッド制御に関する発明のPCIが高かった。

 その他の企業では,カーナビゲーションブランド「ECLIPSE」を展開する富士通テンがシェアを2倍以上に拡大した。同社の車両走行制御に関する発明への注目度が高くなっている。

ザナヴィ・インフォマティクスが実力を発揮

●図5 平均PCIのランキング
●図5 平均PCIのランキング (画像のクリックで拡大)

 平均PCIにより特許出願1件あたりの質を示したのが図5である(各社のPCI総和を出願件数により除算して求めた)。バードビューなど新技術を市場投入してきたザナヴィ・インフォマティクスがトップに立った。同社は日立グループの車載AVメーカー・クラリオンの子会社であり,日産自動車などと取引がある企業である。3位には日産自動車がランクインしており,日産自動車の車両に搭載される運転者支援技術の質の高さを物語っている。

日産の注目特許の特許請求の範囲は?

●図6 リアクション数のランキング
●図6 リアクション数のランキング (画像のクリックで拡大)

 図6はリアクション数のランキングを示したものであるが,日産自動車が1999年に出願したハイブリッド車両の駆動制御装に関する発明に4回の閲覧請求と,1回の情報提供がなされている。

●図7 日産自動車が1999年に出願した「H11-140154」のサイテーションマップ
●図7 日産自動車が1999年に出願した「H11-140154」のサイテーションマップ (画像のクリックで拡大)

 被引用数も20回を数えており,この分野での注目特許であるといって間違いなさそうだ。図7に当該特許の被引用関係図(サイテーション・マップ)を示す。エクォス・リサーチとアイシン・エイ・ダブリュの出願に多く引用されており,これらの企業にとって影響力の大きい特許であることが分かる。

 この発明は,ハイブリッド車両の制御装置において,「目的地までの経路の道路状況に応じて燃料消費量が最少となるエンジンとモーターの運転スケジュールを設定する」発明であり,カーナビゲーションシステムとハイブリッド車両により燃費向上を図るという,車載エレクトロニクスのポテンシャルを最大限に発揮する発明である。それゆえに他社からの注目度も高いようだ。ただし,閲覧請求4回のうち,3回はこの特許出願が登録される前になされており,登録までに特許請求の範囲が補正されたことによって他社からの注目度が落ちている可能性もある。以下に特許請求の範囲を記す(下線部は補正された部分)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】車両を駆動する電力をバッテリーからモーターへ供給するとともに,エンジンにより前記モーターを駆動して発電した電力と前記モーターによる車両制動時の回生電力とを前記モーターから前記バッテリーへ供給し,前記エンジンと前記モーターのいずれか一方または両方により車両を駆動するハイブリッド車両の駆動制御装置において,目的地までの経路を探索する経路探索手段と,前記経路の道路状況を検出する道路状況検出手段と,発進と停止が予測される地点で前記経路を複数の区間に区分する経路区分手段と,運転者の運転履歴を記録する運転履歴記録手段と,前記道路状況と前記運転履歴とに基づいて前記各区間ごとに車速パターンを推定する車速推定手段と,前記車速パターンと前記エンジンの燃料消費特性とに基づいて,目的地までの燃料消費量が最少となるように前記各区間ごとの前記エンジンと前記モーターの運転スケジュールを設定する運転スケジュール設定手段とを備え,前記運転スケジュール設定手段は,前記エンジンの運転効率が低くなる区間(以下,低効率区間という)を前記モーターにより走行するとともに,他の区間の前記エンジンの運転点を運転効率が上昇する側に移動することによって前記エンジンの出力を走行に要する出力よりも大きくし,前記エンジンの出力から走行に要する出力を差し引いた出力で前記モーターを発電駆動して前記バッテリーを充電する第1運転スケジュールと,前記低効率区間と前記他の区間とを前記エンジンのみにより走行する第2運転スケジュールとの燃料消費量を比較し,前記第1運転スケジュールの燃料消費量が前記第2運転スケジュールの燃料消費量よりも少ない場合に第1運転スケジュールを選択することを特徴とするハイブリッド車両の駆動制御装置。

 図8には被引用数の多い発明を掲載した。90回引用されているのはザナヴィ・インフォマティクスと日立製作所が1997年に共同出願したものであり,ユーザーに適切な情報を提供するための特許である。その他,トヨタ自動車が出願した,燃費改善のために運転者に情報提供をする発明もランクインしている(特願平5-272509)。

●図8 被引用数の多い特許のランキング
●図8 被引用数の多い特許のランキング (画像のクリックで拡大)


    今回の検索式

    【分析対象】
    (1)国際特許分類(IPC):G01C21/ or G08G1/
    (2)キーワード(名称・要約・請求項):環境 or 燃費 or 燃料 or エコ
    (3)Fターム:2F129DD45 or 2F129DD47
      =((1) and (2)) or (3)