「セグメント分析」では,まず「技術」軸と「課題」軸の2軸を取って,出願件数を分類した。技術軸にはFタームを用い,課題軸にはテキストマイニングで細分類を行っている。
図6がその結果であるが,「回路と機能(ICカード)×強度・耐久性の向上」の分野への出願が最も多く,重要な技術課題であることが分かる。
同様にPCIを分類したのが図7。「インタフェース(リーダライタ)×精度の向上」が最もPCIが高い。この分野への注目度,注力度が高いことを示している。一方「インターフェース(ICカード)×強度・耐久性の向上」については,出願件数こそ多いものの,PCIの値が低く,当該分野での技術競争はそれほど盛んでないと予測できる。
「エレメント分析」では,PCIの最も高かった「インタフェース(リーダライタ)×精度の向上」について,その分野の出願人の内訳をみてみた(図8)。この分野ではブラザー工業がPCIでトップに立っているが,ソニー,松下電器産業,富士通も高い値で追っている。このように複数メーカーが激しく争っている点を鑑みると,この技術・課題エレメントがRFIDにとって重要な位置付けであることが分かる。
各社で重視する課題は異なる
一方,「出願人」と「課題」を2軸にしたチャートでは,各社がどの課題に注力しているのかが把握できる。量(出願件数)と質(PCI)の両面からチャートを分析することで,注力していくべき分野やアライアンスパートナーが発見できる。
図9は,出願動向を分析した結果。大日本印刷とトッパン・フォームズが強度・耐久性の向上に注力しているのに対し,松下電器産業が精度の向上に注力していることが分かる。また,図10はPCI動向を分析した結果だが,富士通と松下電器産業は「精度の向上」という課題を解決する質の高い特許を有している(松下電器産業はこの課題に対する出願件数も多い)。また,「高速・効率化」という課題に対してはソニーのPCIが高くなっており,FeliCaに代表される同社の技術が高速・効率的であることを示唆している。
「コア分析」では,更にPCIが高い特許を見ていく。図11はPCIが高い順に個別の特許を並べたもの。東レの特願2001-561547は,本分析で用いたPCI項目を幅広くカバーしており,この分野での注目特許であるといえる。オムロンは物流,セキュリティ,在庫管理まで幅広いソリューションを展開しているが,その中で光る特許を保有していることが分かる。特に同社は2007年以降,積極的に同分野でビジネス展開しているが,それを裏付けるように近年に出願したものがランクインしている。
出願件数シェア第7位の凸版印刷は,PCIシェア,平均PCIとも高くなかったが,個別の特許では2件が上位にランクインしている。同社は物流を中心に2004年から事業展開しており,それ以前に出願された特許のPCIが高くなっている。
最後に,最も被引用数の多かったソニーの特願2000-246802のサイテーションマップ(引用相関図)を図12に示す。電気業界を中心に幅広い企業の出願に対して引用されており,当該特許の影響力が大きいことが分かる。
- 本分析の前提
【分析対象】
本分析ではRFIDについてFタームを用いて対象特許の特定を行った。
対象出願期間:2000年から2006年(出願件数推移のみ1988年から2006年)
対象文献:日本国の特許出願
Fターム:2C005TA22、5B058CA15、 5B058CA16、 5B058CA17、2C005AA03、
2C005LB11、2C005LB20、2C005NA06、 2C005NA07、 2C005NA08、
2C005NA09、 2C005NA10、 2C005NA11、 2C005NA12、5B035CA23、
5B035CA24、 5B035CA25
検索結果:13046件
【本分析に利用したPCI指標】
全分析対象特許に対し、「外部からの注目度」に80%、「自社の注力度」に20%、また、登録状態には100%、審査請求済みには50%、公開には30%、消滅には0%のウエイトをかけたPCIR指標を利用した。
【PCIについて】
PCI (Patent Competency Index)とは、公開されている特許情報をもとに、権利としての強さや、特許に対する注目度等の観点において特許を保有する企業の技術力を測るために、SBIインテクストラが独自に開発した指標である。PCIにより企業の保有する技術の重要度を評価することが可能となる。