なぜメディアはそう言わない

 その割には,メディアで第3次石油ショックの到来について議論をすることは,皆無ではないが,稀である。そう言わない理由はない,と思われるのだが,なぜか正面切ってそう言うことを避けているように見える。

 今回の石油価格の上昇は,米国サブプライム・ローンの破綻が原因であって,一時的なものだと考えているのかもしれない。しかし,実際にはそうではない。実需レベルでも,65~85米ドルぐらいではないかと思える。もっとも,世界的な不景気になると,これも下がると考えているのかもしれない。しかし,それも長期的にはありそうもない。

 中国の経済は一時的に停滞することはあっても,マイナス成長になることは,ここ数年間はないのではないか。たとえ,一時的にマイナス成長にはなっても,また数年で復活するだろう。インドの農村も,わずかずつ豊かになりつつあって,どうしてもエネルギー需要は増えるだろう。中国とインドという人口が巨大な国の経済が成長を続ける限り,エネルギー需要は増え続けるだろう。その次のレベルの人口巨大国である,バングラデシュ,インドネシアなども,徐々に成長を始めることだろう。

 もう一つ考えられることは,「第3次石油ショックだ」というと,日本の悪い景気がさらに悪くなると考えて,そのような表現を控えていることである。

 第一次石油ショックのときは,すべてのネオンサインが消えた。深夜のテレビ放送も止まった。そして庶民は,なんと意味もなくトイレットペーパーを買い集めた。こんなことが再現されたら,コンビニの24時間営業は当然禁止されるだろうし,テレビも深夜放送は止められる。こんな思いを持っているのだろう。

 石油ショックという言葉には,このようにネガティブなイメージがつきまとうが,あとで説明するように,実際は全く違うのである。いささか弱体化した現時点の日本であっても,他の国に比べれば,まだエネルギー効率は高いので,石油価格の高騰による影響は,他の国に比べれば相対的に少ない。加えて,第3次石油ショックだと認めることが,日本の再度の成長を実現する条件であるという仮説が成立しそうに思える。

 この仮説を検証してみたい。