ところが8回裏、日本のバントはファウルフライになり、一瞬にしてチャンスが消えた。悪い方の予想が当たり、上野投手は米4番ブストスにホームランを打たれた。思い描いた通りに負けた。

 ああ、ノーアウトランナー2塁のバントは罠だったのだ。思い描ける唯一の勝ちパターンがダメなら、勝てるはずがない。

 それが翌日勝った。昨日バントに失敗した三科選手がアボットよりも上のオスターマン投手から2塁打を放ち、虎の子の1点を取ったと思ったら雨で試合が流れそうになり、山田選手がホームランを打ったがまたブストスにやられた。ダメだろうと見ている私は何度も悪い想像に引っ張られるのに、選手たちはくつがえしてくれる。朝日新聞の書くところによれば、日本チームにはオスターマンの「握り」でハイ、ローが見えていたとは言うけれど。

 これがメダルを獲りに行くということだろう。

 日本女子は、勝つために肉体的トレーニングを超えて、ほとんど勝ち目のない相手と戦うためのメンタルまで身につけていた。星野ジャパンと女子ソフトのこの違いが、私には「獲りにいった人しか獲れない」ように映ったのである。

 その、自分の発言を省みながら空港から家路につくバスに乗り、車内で山田昌弘氏の著書『「婚活」時代』を広げてみたら、何とオリンピックで考えたことがそのままそこで説明されているではないか。

「婚活」はコンカツと読む。大学生が3年後半から行う就職活動、すなわち「就活」のアナロジーとして作られた言葉だそうだ。規制緩和によって自由になった就職は、かえって学生に過酷な競争を強いるようになった。同じように1975年あたりから自由化された恋愛も、望んでいても結婚できない「非婚者」を生んだ。このことが少子化の大きな要因だと著者は長年言い続けている。