ビジネスモデルと要素技術の両方が必要

 「事業力」は、「ビジネスを生み出す仕掛け」と「コツコツ型の要素群」との掛け算だと思っている。仕掛けとはお金が回るところでビジネスモデルと言い換えてよい。これに対してコツコツ型の要素群とは、「技術」「信用」「実績」「商品」「コンテンツ」「ブランド」といった、コツコツと積み重ねていくことで生まれるもののことである。

 シャープにはコツコツ型の要素は揃っている。ブラウン管を持たなかったシャープは、自社で液晶ディスプレイを開発するのだという思いをトップダウンで実現した。トップの強い意思があり、シャープの技術力と組み合わせ力があれば、面白い仕掛けを生み出すことは夢ではない。

 例えば、Zaurus Phoneとシャープ製液晶テレビやDVDレコーダーを無線で連携させる。自宅や事務所で、Zaurus Phoneに入っている電子メールやスケジュールを液晶テレビ画面に映し出したり、DVDレコーダーのコンテンツをZaurus Phoneに転送したり、色々なことができそうだ。当然、インターネットの向こう側のサービスとシームレスに連携できることが必要だ。

 繰り返すが、ソニーのPSP PhoneもシャープのZaurus Phoneも単独の製品ではなく、インターネットの向こう側に広がる、私達の生活に役立つ面白いサービスにまで到達する手段としての価値を与えることが望ましい。コツコツ型の要素群を組み合わせるだけでなく、これまでにない独創的戦略を持つビジネスモデルを両社には是非創り上げて欲しい。

著者紹介

生島大嗣(いくしま かずし) アイキットソリューションズ代表
大手電機メーカーで映像機器などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。既存企業、ベンチャーのビジネスモデルと技術の評価、技術戦略と経営に関するコンサルティング、講演などに携わる。現在は、イノベーション戦略プロデューサーとして活動している。生島ブログ「日々雑感」も連載中。執筆しているコラムのバックナンバーはこちら

本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。