そのシャープは携帯電話機事業で、なかなか面白いスマートフォンを開発している。たとえば、最近、ウイルコムには D4と呼ばれる、Windows Vistaを搭載したスマートフォンを提供し始めた。Wi-Fiも搭載しているし、W-SIMカードを入れ替えるだけで、ウイルコムの次世代高速通信WILLCOM COREにも対応できるのだろう。この小さな筐体の中でWindows Vistaを動かしている点は技術的にはすごいと思う。

 シャープという会社は、昔からいくつかの製品を組み合わせるのが好きだった。電卓とそろばんを組み合わせた商品を実際に生産していたこともある。組み合わせ好きによって、携帯電話にWindows Vistaを搭載したのかも知れない。だが、得意技かもしれないが、もう一歩踏み出して欲しいと思う。

 というのは、ちょっと考えてみれば分かるように、「D4でないとできないこと」はあまりない。5万円台にまで下がったWi-Fi付きB5ノートパソコンにVistaを入れデータ通信カードを挿せば事足りてしまう。D4の小型化技術には敬意を表するが、このままでは一部の熱狂的なファン以外に普及しそうにない。

 シャープは一世を風靡した、携帯情報端末Zaurusを持っており、ビジネスパーソンの間にファンも多い。Zaurus Phoneを出せないだろうか。シャープは過去にベンチャーと協力して、Linuxが動くZaurusを使ったIP電話のサービスを実験したこともある。技術的な問題から製品化は実現しなかったが、Zaurus Phoneはありえると思う。そのとき、機能や技術、既存のOSを組み合わせるだけではなく、アップルが取り組んでいるように、Zaurus Phoneの向こう側に新たなビジネスモデルを展開することを期待したい。

 組み合わせという意味では、アップルも同じではある。iPhoneのOSは、Mac OS Xを基にしており、そのOS XのルーツをたどるとUNIXに行き着く。ただしMacやiPhoneを見てもそれがUNIX由来のOSを搭載しているとはユーザには分からない。OSを前面に出さず、操作性に優れたGUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)で包んでしまった。