ウインテルは死語,リーダー相次ぎ引退


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 4位のBill Gates氏は,パソコン産業の象徴的な存在であり続けてきた。パソコンが成熟産業となり,「ポスト・パソコン」という言葉が声高に叫ばれていた当初でも,米Microsoft社への期待感は高かった。資金力が豊富なこと,ソフトウエア技術者を大量に抱えていることなどから,パソコン以外の領域でも存在感が大きくなる可能性を秘めていた。結果はどうか。家庭用ゲーム機「Xbox」は日本以外の市場で一定の成功を収めた。組み込み用OS「Windows CE」も,多くの分野で採用例がある。しかし,パソコン以外の分野において産業界を牽引するほどの存在になったかといえば,ノーと言わざるを得ない。

 そして2006年6月,ついにBill Gates氏が引退表明した。2008年7月に現役の身を退く。米Intel社を長らく引っ張ってきたGordon Moore氏とAndy Grove氏も,次代の経営陣にバトンを渡した。強烈なリーダーであった偉大なる創立者が次々に退陣したことで,「ウインテル(Microsoft社のWindowsとIntelを併せた造語)」は死語になるだろう。その節目の年に当たる2006年に,Intel社のマイクロプロセサを搭載したApple社のMacintoshが発売されたというのも,偶然のこととは思えない。

久多良木氏,PS3の「Cell」で再挑戦

 プレイステーションの生みの親として知られる久多良木健氏は,いまだに健在だ。「プレイステーション 3」の発売を2006年11月11日に控え,依然として現場を陣頭指揮している。では産業界はプレイステーション 3に何を期待するのか。


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 プレイステーションの歴史は非常識の連続だった。任天堂とセガ・エンタープライゼス(当時)という2強の寡占市場に,CD-ROM搭載を武器に新規参入,多くの人が劣勢とみるなか,ゲーム機業界最大手の地位を得た。2000年に「プレイステーション 2」を発売した際には,ゲーム機に最先端のLSIを使用した。枯れた半導体技術で安価な部品を使うのがゲーム機という,それまでの常識を見事に覆した。ところが,その久多良木氏も実現できなかったことがある。ゲーム機用に培った半導体技術を他の電子機器に転用するという計画だ。DVDレコーダーの一部の機種に,プレイステーション 2用LSIが利用されたが,その応用範囲は限定的だった。


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 久多良木氏は,ゲーム機から生まれた技術を広く普及させることに再度,挑戦する。プレイステーション 3に向けたLSI「Cell」は,物理的には合計9個のCPUコアを内蔵するマルチコア構造を採る。パソコン用マイクロプロセサが二つのCPUコアを内蔵するのにとどまっている中,斬新なアーキテクチャといえる。Cellの開発に当たってソニー・コンピュータエンタテインメントは米IBM社や東芝とも提携,この技術をサーバー機や民生機器にも展開したいともくろむ。この夢が実現すれば,Cellは産業界に大きな影響力を持つようになるが,そのためにも,まずはゲーム機として是が非でも成功させなければならない。