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日経エレが目撃した電子産業・歴史の現場

【電子産業史】1977年:垂直磁気記録

磁気記録に未来を与え続けた発明

  • 2008/08/11 09:00
  • 1/3ページ

1977年,磁気記録関連の国際会議「Intermag 1977」で,垂直磁気記録の基本概念が登場。


図1 「垂直磁化を用いた高密度磁気記録」 岩崎俊一氏の論文を掲載した,本誌1978年8月7日号の表紙。

 垂直磁気記録に関する最初の論文がIEEEの論文誌に掲載されたのは1977年である。生みの親である岩崎俊一氏(当時・東北大学 教授,現・東北工業大学 学長)らは1975年ごろから着想を温めていたという。日経エレクトロニクスには「垂直磁化を用いた高密度磁気記録」というタイトルで1978年に寄稿が載った(図1)。

 同論文にも書かれているように,垂直方向に磁気記録するというアイデア自体は,それ以前に幾つかあったという。しかしそれらは単なるアイデアにすぎず,1977年の岩崎論文以前は誰もその実現可能性を検証した人はいなかった。岩崎氏らは垂直記録のメカニズムを解明し,実際に垂直記録できる磁気ヘッドと記録媒体を試作し,超高密度記録が実現できることを実証して見せたのである。

 寄稿依頼のため研究室を訪ねた時,岩崎氏は長短2種類の棒磁石を手に取って,原理を説明してくれた。その当時まで,磁気記録といえば,垂直記録とは対を成す概念の長手記録だけが追究されていた。これはちょうど長い棒磁石を,N極とN極,S極とS極を突き合わせた形で,長さ方向に並べて記録媒体中に残したような記録方式になる。これに対して,垂直磁気記録では短い棒磁石が媒体面に垂直に,N極とS極が隣り合うように並べた形で残る。長手記録の場合は隣り合う棒磁石が反発し合い,互いに自身とは反対方向の磁界を受けるので,磁化が弱くなる(減磁)。反発し合う磁石を高密度に並べることは難しく,減磁作用のため情報を長期保持できない。

 これに対して垂直記録では,隣り合う棒磁石が引き合い,互いに自身の磁化を強める磁界を受ける。隣同士引き合うので本質的に高密度に記録でき,減磁作用がないので情報を長期保持できる。そんな説明を受けた。

初の応用製品登場

 論文掲載から27年。垂直磁気記録を応用した初の製品である東芝のHDDが2005年に発売された。ほかにも垂直磁気記録を応用したHDDとして,2006年1月に米Seagate Technology社が製品化,米Hitachi Global Storage Technologies(HGST)社も5月にサンプル出荷を始めた。長年の努力がようやく実り始めたようである。

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