本当に技術力はあるのか

 ただ、「それだけか?」との疑いも捨て切れない。改めて「技術力には自信があるんだけど、どうもカネ儲けがヘタでねぇ」というセリフを吟味してみて、これまで疑ってこなかった前半部分はどうなのよ、と思うのである。つまり、「技術力は」と胸を張って言えるほどの技術優位性が、本当にあるのかということだ。

 OKI在籍中、先輩たちから「企業規模は確かに大きくない。けど、技術力は大したものなのだ」といった趣旨の訓示を何度も聞かされた。それが刷り込まれているせいか、OKIの現役技術者と話をしていると、今でも同じような発言を折々に聞く。試しにと先日、そんな話が飛び出した瞬間を逃さず、記者根性丸出しで突っ込んでみた。

「ところで、技術力って、どうやって測定してるの?」
「それは製品のレベルとか学会発表とか特許とか、指標はいろいろあるんじゃない?」
「そうだとして、どこと比べたときOKIはすごいの?」
「いや、ええっと・・・」
「日立よりすごい?」
「うーん・・・」
「NECよりすごい?」
「・・・・・・」
「サムスンよりすごい?」
「・・・・・・」
「米国企業には負けない?欧州企業には?」
「いや、そう言われてもよくわからないなあ、でも技術力はあるんだよ、きっと。まあ、自分たちで言ってるだけでなく、取引先なんかも『OKIさんの技術は大したものだから』なんて言ってくれるし」

 「それってリップサービスっていうやつなんじゃない?」とノドまで出かかったのだけど、「旧交をあたためる」という集まりの趣旨から大きく逸脱しそうなので思いとどまった。それより何より、「親」が変わるという局面に彼らは身を置くわけである。ここで私なんかが聞かなくとも、それを自ら問い掛ける機会がきっとくるだろう。それも、そう遠くなく。そのころを見計らって、また同じ質問をぶつけてみようと思う。