そうかぁ、原因はもっと違うところにあるのかもしれないなぁ。ということで、振り出しにもどって考えてみた。OKIの突出した特徴とはなにか、それは不振の根本原因となり得るか。そう考えていって、その果てにたどりついた結論が「給料」だった。

 まず、「これこそOKIならではの問題」と言えるかどうかを改めて調べてみる。『Yahoo!ファイナンス』によれば、OKIの平均年収は、677万円(平均年齢40.4歳)である。これに対して、これから「親」となるロームは705万円(同35.7歳)だから、平均年齢は5歳も上なのに年収は平均で30万円も安いことになる。次いで、新人時代に「ライバル」と教えられた旧電電4社について調べてみた。NECは平均年収748万円(平均年齢39.6歳)、日立製作所は同745万円(同40.0歳)、富士通は同793万円(同40.3歳)。平均年齢はほぼ同じだが、金額は完敗である。

 ひょっとしたら比べる相手が巨大企業だから差が出るのかもと、NECとかより規模の小さな企業を調べてみた。たとえばオムロンは790万円(同40.2歳)、横河電機は884万円(同43.1歳)。うーん、もっと差がついてしまった。そうか、調子のいい企業と比べるからいけないのだと、不振が伝えられるメーカーをいろいろ探してみた結果、やっと同水準で業態が近いメーカーを見つけることができた。岩崎通信機の675万円(同42.3歳)である。過去5年の実績を調べてみると、同社の売り上げはここ5年間で約2割も減り、赤字の年も目立つ。直近の2008年3月期決算では純利益で黒字となっているが、これは厚生施設などの売却益によるものらしく、経常利益ではやはり赤字となっている。

20年以上埋まらなかった格差

 OKIと同水準の会社も、探せばあることはある。けど、業界水準と比較すれば「給料が安い会社」と言っても間違いはなさそうだ。しかも、それは何も今に始まったことではない。20数年前、私がOKIに入社したころから社員はみな「うちは給料が安いから」と自覚し、社外の人からもよく「OKIさんは給料が・・・」と指摘されていたことである。私は入社するまで知らなかったけど。

 80年代当時、賃上げ幅は春闘によって決まっていたのだが、OKIなど大手エレクトロニクス・メーカーは電機労連に属しており、横並びになっていた。ところが、私の入社前にOKIは赤字に転落した経験があり、その危機は事業所の土地などを盛大に売って切り抜けたものの、その何年間かは給料が上がらなかったらしい。業績は回復し給料は再び上がるようになったが、電機労連の横並びが逆に足かせとなり「過去に赤字で賃上げが滞った分は利益が上がったときに他を上回る賃上げで取りもどす」ということがなかなかできなかった。つまり、過去のキズは何年経っても癒えず、格差はいつまでたっても埋まらないという状況だったのである。