次に国内生産の三つ目の役割ですが,それはグローバル生産の負荷変動を吸収することです。

 我々は複数の工場で,同じ車種を生産することをリンク生産と呼んで実践しています。図1に日本の例を示しますが,以前からトヨタの内製車両工場と車体メーカーとの間で,リンク生産を進めてきました。こういう取り組みを実践することで,国内工場全体で車両生産のフレキシビリティを高め,各工場の稼働率をなるべく最大に持っていこうとしています。これをグローバルに展開したのが,グローバルリンク生産体制です。

リンク生産

 例えばアメリカ向けのカローラといっても,カナダとアメリカと日本で作っています。また欧州向けのカローラですが,日本とトルコ,イギリスなどで作っています。こうすることで,海外はなるべくフルに近い連続生産を安定的に行い,需要の変動分は日本で吸収してあげる。あるいは各国の工場はカローラだけを作っているのではないので,例えばカナダで作っているある車種の生産量が減ってくれば,カナダで他の車種を増やすなどして,それをずっと調整しながらどこの工場も稼働率を上げていく,というようなことを考えています。そして,これの最終的な受け皿は全部日本になります。日本は柔軟性を海外よりはるかに高めなくてはならないということです。

 グローバル生産体制,世界レベルでのリンク生産を実践することで,世界中の工場で持っている能力をフルに活用しています。そして当たり前ですが,リンク生産も網の目のように張ればいいかといったらそうではありません。溶接ラインや金型などの設備は二重投資するわけですから,できるだけそれらを抑制して,そうはいいつつも最小限のリンクで最大の効果を出す,ということを企画しなければなりません。

 また,いろいろな場所で生産するこで,地震を含めた災害などのリスクにもある程度対応できるという効果もあります。こう進めることで,投資を抑制しつつ,結果的には生産の国際競争を高められます(図2)。

世界レベルでのリンク生産