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コラム

自分たちが欲しい物を造る,すべてはそこから始まります

スノーピーク 社長 山井 太 氏

2008/06/04 12:30
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山井 太 氏
写真:増井 友和

 自分たちが欲しい物を造る――そんな会社をやっています。創業者である父は,山登りやロッククライミングが好きで,そこで使う道具を自ら設計していました。ここ(三条市)には以前から鍛冶屋さんがたくさんありましたので,図面を持ち込んで「こんなものを造ってほしい」とお願いし,それを山で検証して,商品として売り始めた。これが我々の起源です。うちは,主にオートキャンプや釣りなどのアウトドア用品を造っていますが,自らもユーザーとして物を造るという考え方は父と同じで,第2世代の我々になっても変わっていません。

マイクロストーブで世界に打って出る

――最近海外での事業展開に積極的ですが,なぜ海外なのでしょうか。

 この会社に入ったのは1986年ですが,その時から自分がこれから人生を懸けるスノーピークという会社を,世界一にしたいというロマンチックな気持ちがありました。そして,なぜだか当たり前のように,あるところまで行ったら世界に出ようと思っていました。それまでに国内でブランドを打ち立て,日本のメーカーとして胸を張って世界に出て行くんだと決めていたんです。

――ブランド力で世界に正面から勝負をかけるというのは日本の中堅企業には難しい,というかあまり例がありません。

 例えて言えば「武器」が必要です。海外のマーケットで一定の地位を獲得できるかどうかは,商品力を含めて自社の有形無形の資産をよく理解し,他社にできないことをいかにやるか,だと思います。仮説で構いませんが「これなら他社はできないが,うちならできる」というものがあれば,そこに全力を集中します。

 うちの場合,その決め手はマイクロストーブ(超小型コンロ)でした。世界で一番軽く,一番小さい。何しろ胸ポケットに入る。

 我々は金物ベースの会社です。アウトドアの業界で金物,金属製品の中で,ユーザーの思い入れが最も深いものは何だろうかと考えました。その結果,ストーブやランタンなどの燃焼器具に行き着きました。ならば「ストーブやランタンで世界一すごいものを造れば勝てるのではないか」「それがブランド力の源泉になるのではないか」と考えて,開発に着手しました。最初は仮説にすぎなかったのですが,結果的にシンプルで正しかったと思います。

 ただ,言うのは簡単ですが,やるのは難しかった(笑)。1994年に開発を決断しましたが,その時点ではうちは燃焼器具を全く造っていませんでした。結局,発売できたのは1998年。開発に4年間もかかりました。

 その理由の一つは,火を使うために安全性の確認などに時間がかかったことです。基礎技術がなかったので,そこから始めました。そのために他社の製品をすべて買ってきて分解し,構造を調べました。そして,一つひとつ燃焼器具を手掛けるノウハウを身に付けていきました。

 ようやく発売して米国に商品を持っていってバイヤーに見せたところ,「ミニチュア模型はいいから本物を出してくれ」と言われました。ここまで小さなストーブを今まで見たことがなかったからです。アウトドア好きの人であれば,山登りをする人でもバックパッキングをする人でも,根源的なニーズとして用具を1gでも軽く,しかも小さくしたいわけです。だから「世界で一番」が売れないはずありません。海外でも,売れて当たり前。しかし,最初に仮説がなかったら海外進出はなかったと思います。

 うちがマイクロストーブを出してから半年以内に10社ほどが似たような商品を造ってきました。つまり,ライバル会社にも技術はあったわけです。しかし,最初にやったのはスノーピークです。なぜ他社はやろうとしなかったのでしょうか。こういうものを造ろうという発想がなかったし,売れるとも思わなかったということでしょう。ですから,ものづくりでは,どのように造るかよりも,何を造るかの方が難しいと思います。

 我々が誇りにしているのは,日本のスノーピークが最初にマイクロストーブを造ったという事実です。「我々がオリジナルで,ほかはみんなコピー」。こう胸を張れることは,今の時代では大きな強みです。日本企業は,今までだいたい逆だったのではないでしょうか。米国の企業がオリジナルを造って,例えばうちがコピーを造るという図式です。僕はコピー商品を造るくらいなら,会社を畳みます。我々が最初に造り,他社が追随したことで,マイクロストーブのマーケットができました。つまり,うちが新しいマーケットをつくった。これは,本当に気持ちのいいことです。

 答えになっているかどうか分かりませんが,世界に打って出るには明確な仮説を立てて,「これを造れば勝てる」というものに集中し,それをフックにしてブランドを構築することです。我々は分厚いカタログ1冊分の商品がありますが,ブランドが確立できていると相当強いわけです。新規参入でもやっていけます。

プロフィール
山井 太(やまい・とおる)
 1959年12月新潟県三条市生まれ。明治大学を卒業後,東京の外資系商社に勤務。1986年に三条市に戻り,父親が創業したスノーピークに入社。入社後,スノーピークのブランドを登山用品ブランドからアウトドア用品ブランドに再構築。主にオートキャンプ向け製品の開発と,個々の製品を組み合わせて使えるようにする「システム化」を手掛けて業容を拡大。1996年,代表取締役社長に就任。

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