叱咤を誇りに思わせる優れた人格

 中尾の技術者生涯は、「力による統率ではなく、人格による統率」ということに尽きるだろう。筆者の記憶には、「副社長(中尾のこと)に叱られてなあ」と 先輩や上司が嬉しそうに話す様子が鮮明に残っている。「叱られたことを誇りに思わせる」爽やかなマネジメントは、中尾の類まれな人格から生まれたものだっ たに違いない。

 昨今、ハード/ソフトの区別なく、技術者のチーム・ビルディングや人心掌握が課題として取り上げられることが多い。そのためか、書籍や雑誌記事で はチーム・ビルディングや人心掌握のコツや手法が多数紹介されている。だが中尾の人生をたどると、技術へのひたむきな姿勢と他者に対する思いやりさえあれ ば十分で、その他のことは枝葉末節であることが見えてくる。すべての技術者が忘れてはならない基本姿勢が中尾の人生にはあると筆者は思うのだ。

―― 完 ――