残念ながら、日本は真の国際化で過去の2回のチャンスを活かしきれなかったと私は思う。いろいろなものを海外から持ち込んだものの、肝心なものには手をつけず、日本社会の中だけで楽しめる心地よさの中に居残った。その反省に立ち、21世紀を生き抜くために、日本は「内なる国際化」を本当に果たさなければならない。見せ掛け表面だけの国際化ではもう立ち行かないのだ。

 過去の2回は、失敗だったとしても、それでも何とかなったかもしれない。しかし、今回はどうだろう。21世紀に入り、世界は先進国に新興工業国、発展途上国までも巻き込み、この世紀を生き抜いていくためにし烈な競争を繰り広げている。競争だけではない。多くの国が多くの国と依存しあい、決して一国で生きていけるような状況ではなくなった。世界の国々との競争と連携が生きていく条件になったのだ。つまり、内向きの議論にだけ目を奪われている時代ではないのである。

 この状況を脱して、内なる国際化をどう実現していくのか。そのための議論をシリーズで進めてみたい。今回はその第一歩である。

(補足)この稿の最終校正をしていたところ、テレビからこんなニュースが流れてきた。日本板硝子の社長が辞任、後任はなんと以前に買収した海外企業の元社長の外国人になるというのである。日本人の前社長曰く、「買収で世界企業になった。その経営者は海外マーケットに精通した人物でないと務まらない」と。理由はともあれ、日本の大企業の社長に外国人が就く。これなどは内なる国際化に大いに貢献する出来事だろう。

著者紹介

末吉竹二郎(すえよし・たけじろう)=国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEPFI)特別顧問

1945年1月、鹿児島県生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。ニューヨーク支店長、同行取締役、東京三菱銀行信託会社(ニューヨーク)頭取、日興アセットマネジメント副社長などを歴任。日興アセット時代にUNEPFIの運営委員会のメンバーに就任したのをきっかけに、この運動の支援に乗り出した。2002年6月の退社を機に、UNEPFI国際会議の東京招致に専念。2003年10月の東京会議を成功裏に終え、現在も引き続きUNEPFIにかかわる。企業の社外取締役や社外監査役を務めるかたわら、環境問題や企業の社会的責任(CSR/SRI)について、各種審議会、講演、テレビなどを通じて啓蒙に努めている。趣味はスポーツ。2003年ワイン・エキスパート呼称資格取得。著書に『日本新生』(北星堂)『カーボン・リスク』(北星堂、共著)『有害連鎖』(幻冬舎)がある。