今泉 嘉久 氏
写真:糠野 伸

 昭和40年代ごろ,日本が米国とか欧州にさまざまなものを大量に輸出した時代がありましたよね。それと同じことが今,中国から日本への輸入という形で起こっている。あと10年経つとインドなどからの輸入も増えるかもしれない。そのときに日本はどうするべきか。

 あの日本の輸出攻勢に耐えて生き残った,米国と欧州の企業は何をやったでしょう。単純にもの(商品)だけではなく,違う空間みたいなものを自分で発見して,その中に自分を入れてるんです。それはサービスという言葉で表現できるかもしれないし,ブランドっていう言葉かもしれませんけれども,何かを作り上げてるんですね。

 それを考えると,単純にものづくり回帰とか,日本はやっぱりものづくりの国だって簡単には言うべきじゃないと思う。ものプラスアルファの国だって言うべきだと。精度の高いもの,安いものを追い求めても,最終的には中国に追い付かれてしまいますよ。というより,追い付かれるという前提で物事を考えた方がいいと思いますね。

 私がこんなことを言うのは,文具を中心とした雑貨というビジネスの範疇の中にいるから,最先端の技術で生きていらっしゃる方々とは違う分野にいるからかもしれませんが。