技術競争力強化を図るアイシンAW

 技術競争力を表すPCIシェア(図8)で各方式を見てみると,シリーズ方式では出願件数トップのトヨタを抜き,日産がPCIシェア22.9%で1位となる。ヤマハ発動機(出願件数は25件で7位)がシェア8.7%で3位に躍り出ており,他社の注目する技術を有する可能性が高い。

 パラレル方式では,膨大な技術ストックを保有するトヨタがPCIシェアでも25.8%とトップである。2位には日産がシェア16.5%,3位にはアイシンAW(出願件数は178件で5位)がシェア12.7%で続く。

図8 2000~2007年における方式別の各社PCIシェア
図8 2000~2007年における方式別の各社PCIシェア (画像のクリックで拡大)

 シリーズ・パラレル方式でもトヨタはPCIシェア28.7%と技術競争力の面からも依然として大きな存在感を示す。2位には,PCIシェア22.7%でアイシンAW(出願件数は267件で3位)が大躍進している。トヨタ系列の部品メーカーである同社は,2001年にトヨタ「プリウス」に搭載しているハイブリッドシステムと同じものをフォードに供給することを発表している。こうした時期からすでに,大手自動車メーカーが注目する高い技術の開発に成功していたようだ。

 次に,各方式で2000年以降の出願件数上位20社の平均PCIをみていく。平均PCIでは,特許あたりの質をみることで,出願特許件数は少ないながらも,他社が注目する技術を有する可能性の高い企業が浮き上がってくる。

図9 シリーズ方式で見た20社の平均PCI
図9 シリーズ方式で見た20社の平均PCI (画像のクリックで拡大)

 シリーズ方式では,ヤマハ発動機がトップに顔を出し,2位にアイシンAW,3位に三菱自動車が続く。

図10 パラレル方式で見た20社の平均PCI
図10 パラレル方式で見た20社の平均PCI (画像のクリックで拡大)

 パラレル方式では,1位にアイシンAW,2位に三菱自動車工業と続き平均PCIで3位以下を圧倒して引き離す結果となった。均一して質の高い特許を有していることから,両社はこの分野の技術競争で優位に立っているといえるだろう。

図11 シリーズ・パラレル方式で見た20社の平均PCI
図11 シリーズ・パラレル方式で見た20社の平均PCI (画像のクリックで拡大)

 シリーズ・パラレル方式では,エクォス・リサーチが平均PCIで1位に躍り出ている。特許出願件数12件の同社は,質の高い特許を有しているといえよう。また,同様に2位のヤマハ発動機も出願件数13件であるが少数精鋭の特許を有しているようだ。そしてアイシンAWが3位に続く。


    今回の分析条件

    【ハイブリッド・電気自動車】

    分析対象特許:日本国特許(公開,登録の両方)
    1985年以降に出願された日本国特許(公開,登録の両方)を対象にIPCとFタームを用いて特許の特定を行った。

    HEVタイプの分類:次の条件でハイブリッド電気自動車関連特許の分類を行った。
    ・シリーズ方式:分類説明に「シリーズ方式」,「シリーズ式」が用いられる分類
      →(FI=B60K6/04,51 or F02D29/06,D)or (FT=5H115PU26)
    ・パラレル方式:分類説明に「パラレル方式」,「パラレル式」が用いられる分類
      →(FI=B60K6/04,530 or F02D29/02,D)or (FT=5H115PU25)
    ・シリーズ・パラレル方式:分類説明に「シリーズ・パラレル方式」,「シリーズ・パラレル式」,「スプリット方式」などが用いられる分類
      →(FI= B60K6/04,550 or B60K6/04,551 or B60K6/04,553 or B60K6/04,555) or (FT=5H115PU27 or 5H115PU28)

    【本分析に利用したPCI指標】
    全分析対象特許に対し,「他社からの注目度を示すPCI指標項目」に100%のウェイト付けを行なって各特許のPCI値を算出した後,特許のステータスにより以下のパーセンテージをかけて算出した。
    登録特許:100%,審査請求済み特許:50%,公開済み特許:30%,消滅特許:0%