寄付金欲しさの特別措置

 それに関して、私が今でも忘れられない衝撃的な出来事がありました。それは、自民党税調に所属する議員への説明に伺った時のことです。議員会館で、局長と一緒にその内容について説明をしたのですが、その議員が持っている「電話帳」を見ると各ページに「関係する団体からの寄付額」が手書きで書き込まれているではないですか。つまり、○○製品に関する優遇税制の項目には、その製品に関与する○○業界の団体からの寄付額が書き込まれているのです。その額が、優先度などを決める一つの評価指標になっているのでしょう。

 これを見てやっと理解しました。優遇措置を多く作り、かつそれを恒久的なものとせず時限的なものにするのは、企業や業界団体の寄付に対するインセンティブを高めるためだ、ということを。優遇措置を作ってもらうためには陳情や寄付が必要ですが、一度できてしまっても、更新のたびに税制継続のための陳情や寄付が必要な仕組みを作り上げているのです。

 こうした体質こそが、今回の問題の病巣だと私は考えています。これを根治するためには、「隠れ補助金」ともいえる租税特別措置を見直すことが必要です。そして、長期的に必要なものはどんどん恒久的な措置とすべきでしょう。

 海外に目を転じれば、アメリカにも約11兆円の租税特別措置があります。けれど、その内容をみると「恒久的措置とすべきものを意味もなく期間限定としている」といったものは見当たりません。スクラップ&ビルドが徹底されており、機動的に産業政策に使っています。

 日本もそうなるべきでしょう。多くの人たちが租税特別措置に関心を持ち始めた今こそ、格差で固定化された制度を組み替える好機だと思うのですが。

著者紹介

藤末 健三(ふじすえ けんぞう)

早稲田大学客員教授 中国清華大学客員教授 参議院議員


1964年熊本県生まれ。86年東京工業大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に行政官として入省。95年マサチューセッツ工科大学経営学大学院に留学、96年には同大学院とハーバード大学行政政治学大学院で修士号を取得。99年東京工業大学で学術博士号(Ph.D)を取得し通商産業省を退く。同年東京大学大学院工学系研究科専任講師に就任、2000年から同総合研究機構助教授。04年民主党参議院選挙に比例区で当選する。05年からは早稲田大学客員教授、中国の清華大学客員教授も努める。公式ブログはhttp://www.fujisue.net

本稿は、技術経営メールにも掲載しています。技術経営メールは、イノベーションのための技術経営戦略誌『日経ビズテック』プロジェクトの一環で配信されています。