そうか、そうだったのか。飛んだらダメなのね。温暖化阻止のための行動として最も効果があるのは飛ばないこと、つまり、飛行機での出張や旅行を減らせばいいということのようである。併行して、クリーンエネルギーで飛ぶ新型飛行機を開発すればよい。

 とすれば、コンサルティング会社の設立はあまり意味がないかもしれない。細かいことをいろいろしなくても、とりあえず飛行機出張の大幅な自粛をすれば、相当に炭酸ガスの排出は低減できるのだから。

 「と、思い直してみたわけよ。でもさぁ、現実問題として飛行機出張をやめられるか」

 「うーん、それは企業哲学の問題だろうな。そういえば、確かNHKで英国の銀行が飛行機出張を禁止してオンライン会議にしたっていう番組をみたぞ。家族と過ごす時間が増えたと社員が喜んだそうだよ。経営側からしてみても、移動と滞在時間を仕事に割り振れるわけだから効率がいい。ウインウインの関係ということだな。でもさ、俺が思うにあの話には裏があるんじゃないかと思うのよ。家族と過ごす時間が増えるのもうれしいかもしれないけど、それで大喜びなんてあまりに美談すぎるよな。それよりカネじゃないか?出張費が浮いた分を社員にボーナスとして還元してたんだよ、きっと」

だったらこのビジネス

 二転三転しながら話は結局、「低炭素経営時代に入ると飛行機出張が禁止になるからテレビ会議サービスがヒットする」というところに落ち着いた。

 「じゃ、こうしようぜ。俺は関係者から低炭素経営技術の市場動向について聞いておくから、おまえはオンライン会議の企画。それが本職だもんな、任せたぞ、じゃあ」と、梅干し入り酎ハイを飲み干し、官僚氏は議事堂の方へすたすたと帰っていった。