もう一つの理由は,HD DVDで実現できる容量などの仕様が,対抗規格のBlu-ray Discと比べて劣っていたこと。「コンテンツの量は増加する一方だ。光ディスクであれ,HDD であれ,最終的に容量の大きい方が勝利する。すべてが増大の一途を辿るという「情報革命」のただ中にある歴史上の全体的傾向からは,当然の結末だと思える」(コンサルティング,役員・経営者),「DVDのオーサリングも仕事でやっておりますが,特典映像をこれでもかというぐらい入れたがるクライアントの多いこと…。容量なんていくらあっても困ることはありません」(ソフトウエア,その他,40歳代),「Blu-ray Discは技術的に困難というのが東芝が規格統一を拒んだ理由ならば,東芝は凋落の一途をたどるだろう。困難と思える技術に挑戦するのが技術企業の務めであり、成し遂げてこそ隆盛があるのではないか」(電子部品/電子材料,技術者,30歳代)。

消費者に迷惑をかけたのは確実

 意志決定の際に多くの要因が不確実である以上,経営の視点からの意見が二つに分かれるのは仕方ないかもしれない。双方の意見にはそれぞれ一理あり,甲乙つけがたい。

 ただし視点がユーザー側に移ると,回答者の意見は一つにまとまる傾向があった。非常に多くの回答者が,今回の規格争いはユーザーに迷惑をかけたと主張した。「消費者にとっては百害有って一利なし」(LSI,技術者,40歳代),「現行DVD規格が乱立して消費者側からすれば迷惑極まりない状態でしたので,次世代DVDも規格統一が困難と判明した時点で劣勢だったHD DVDは即時撤退すべきであったと思います」(コンピュータ/システム/ソフトウエア,技術者,30歳代),「消費者を見ずに,上げた拳のやり場を探すような行為だった」(民生機器,技術者,40歳代)など,枚挙にいとまがない。

 規格争いが消費者に迷惑をかけたとみなしたのは,「もっと早く決断すべきだった」を選んだ回答者だけではなかった。「現時点における適切な判断だった」を選択した回答者の間でも,ユーザーにとって不利益だったと指摘する声は少なくない。実際,「現時点における適切な判断だった」を選んだ理由として,消費者の損害を最小限にくい止めたことを挙げた回答者が多かった。「いつまでもずるずる引っ張ると消費者が迷惑する。負けが決定した時点で早めに消費者に“やめる”と宣言することは結果的に消費者保護に繋がると考える」(コンピュータ/ソフトウエア/通信端末,技術者,40歳代)。