ハリウッドの思惑と裏腹,2004年に入ると両陣営の争いは激化した。1月,米国で最大の家電展示会「2004 International CES」で,両者は再生専用ディスクに対応したプレーヤーの試作機を並べた。東芝は,DVD Forumが承認した「HD DVD-ROM」規格のバージョン0.9版に準拠する装置を展示。ソニーは,Blu-ray Disc規格の再生専用媒体「BD-ROM(仮称)」に向けたプレーヤの試作機を初めて見せた

 ハリウッドが大きな関心を寄せたのは,Blu-ray DiscとHD DVDのそれぞれが,再生専用ディスクを安価に作れるかどうかだった。各規格を推す企業は,ディスクの製造拠点にマスコミを相次いで呼び寄せ,量産準備が着々と進んでいることを誇示するとともに,コストに大きく響くディスク1枚あたりの製造時間を競った。3月にソニーは静岡県の試作ラインを公開し,ディスク1枚を5~6秒で製造できると主張。5月にはHD DVD側の媒体メーカー,メモリーテックが量産ラインを立ち上げ,ディスク1枚を3.5秒で製造できるとして,Blu-ray Discと比べて低コスト化に向くことを強調した。

 秋になると,両陣営のコンテンツ争奪合戦の勝敗が徐々に明らかになる。9月にソニーは,大手映画会社の米Metro-Goldwyn-Mayer(MGM)Studios社の買収を決めた。同月21日には,ソニー・コンピュータエンタテインメントの次世代プレイステーションが再生専用Blu-ray Disc媒体「BD-ROM」を採用すると発表した。対する東芝は11月29日に緊急記者会見を開催。ハリウッドの大手映画スタジオの米Paramount Pictures社,米Universal Pictures社,米Warner Bros. Studios社,米New Line Cinema社が,「HD DVD」への支持を表明したことを明らかにする。12月9日には,米The Walt Disney Companyが,Blu-ray Disc向けにコンテンツを供給すると表明した。それぞれの陣営についた映画会社の市場シェアは拮抗しており,両者はがっぷり四つに組んだ格好だった。

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* Tech-On!ではこれまで,次世代DVDに関する動きを詳細に報道してきました。関連記事は500本以上にも上ります。2002年から各年ごとに分けて動きをまとめるとともに,それらの関連記事へのリンクを集めました。本記事はその2004年版です。